書誌情報

国立感染研は安全か─バイオハザード裁判の予見するもの

国立感染症研究所の安全性を考える会[編著]
A5判上製/308頁/4000円
ISBN978-4-8461-0910-3 C0036

 国立予防衛生研究所=現国立感染症研究所が早稲田大学文学部の真裏、閑静な住宅地である新宿区戸山に移転してくることが突然、周辺住民、早大に伝えられたのは1986年のことである。まさに寝耳に水の話だった。この施設がどのような活動を行っているのかが明らかになるにつれて、住民と早稲田大学教職員の疑念と不安は高まった。
 88年には建設工事着工が強行され、これに対して住民と早大教職員は89年、国を相手に移転差し止めを求めて東京地裁に提訴を行った。2001年に原告敗訴、東京高裁に控訴し、03年にまたも原告敗訴、最高裁でも05年上告が棄却された。
 本書は、最高裁が「取り返しのつかない惨禍」を生み出しかねない危険を指摘した本裁判の記録であり、全国で繰り広げられているバイオ施設、病原体研究施設の建設反対運動の理論的支えとなるものである。(2010.2)


■目次
はじめに(鈴木武仁)
第一章 バイオハザード裁判とは?
 一 国立感染症研究所とは何か?(伊東一郎)
  一 国立感染症研究所とは何か?
  二 国立感染症研究所がどこにあるか御存知ですか?
  三 ではなぜ国立感染症研究所がこんなところに立っているのでしょうか?
  四 国立感染症研究所が語らないこと
  五 もし大地震により現在の感染研が今の場所で事故を起こしたらどうなるでしょうか?
  六 大地震が起きてもこのような都市災害をおこさないために何が必要か
 二 環境を守るために市民はどう立ち上がったか(武藤徹)
  国立感染症研究所と影の戦中史
  それは一通の手紙から始まった
  公開質問状
  「予研安全対策期成同盟」
  怪電話
  座り込み開始
  裁判提起
  「予研裁判を支援する会」が結成される
  人骨が発見された
  「支援コンサート」と「キャロリングデモ」
  芝田進午という人
  裁判を支えた人々
 三 早稲田大学教職員はいかに立ち上がったか(伊東一郎)
  早稲田大学と予研移転問題
  教職員組合の運動と大学と予研との質問書・回答書のやりとり
  建設工事の強行と抗議活動
  予研裁判への教職員の参加と「予研裁判を支援する会」の設立
  「今、再び予研移転に反対する署名」運動と早稲田大学
  予研の移転と実験の強行
  第一審の結審、二審さらに上告への運動

第二章 法廷においてバイオハザード裁判はそう闘われたのか
 一 一審の総括(島田修一)
  一 バイオハザード裁判
  二 エーロゾル対策
  三 WHO基準違反
  四 人為的ミス
  五 耐震性能
  六 国際査察と偽造
  七 立証責任
  八 さいごに
 二 二審以降の展開(川本幸立)
  一 高裁の審理
   一─一 情報公開文書により判明した事実で安全性を質す
   一─二 感染研周辺地域廃棄拡散調査を実施
  二 高槻JTバイオ施設情報公開訴訟の控訴審判決で情報公開を命ずる
   二─一 経過
   二─二 争点
   二─三 控訴審判決(大阪高裁判決)の主旨
   二─四 判決の意義

第三章 科学者はどう行動したか
 一 いま問われる研究者の倫理とバイオハザード(新井秀雄)
  研究者と倫理
  国立感染症研究所の歴史と研究者たちの倫理
  検定不正事件と産業スパイ事件
  研究所のあり方に関する委員会
  当局の対応と職員たちの対応
  研究者と研究者を支える倫理
  研究交流促進法と研究開発強化法
 二 新井秀雄さんの裁判が意味するもの(本田孝義)
  著書『科学者として』出版
  査問
  厳重注意処分
  「新井秀雄さんを支える会」発足
  裁判提訴
  予研=感染研裁判における「署名偽造事件」
  何が「歪曲」「誹謗中傷」にあたるのか
  倉田毅氏の証人尋問
  感染研当局は「内規違反」を持ち出してきた
  判決、そして最高裁へ

第四章 国際社会におけるバイオハザード予防と枠組み(長島功)
 一 海外のバイオハザード裁判
  一九八〇年代の米国
  フランスのパスツール研究所
  ボストン大学医療センター
 二 WHOの指針と勧告
  指針『病原体等実験施設安全対策必携』
  勧告『保険関係実験施設の安全性』
 三 主要国のバイオハザード予防のための規制
  一 英国
   (1)英国の『労働安全衛生法』/(2)有害物質規制規則(COSHH)
  二 米国
   (1)「国家環境政策法」/(2)有害物質規制法/(3)「微生物学・医学実験施設のバイオセーフティ」(第四版、英文、一九九九年)
  三 オーストラリア
   今日の国際社会におけるバイオ施設の立地規制の現状についてのまとめ

第五章 バイオハザード裁判の本質(島田修一)
  はじめに
  一 立地条件について
  二 国際査察について
  三 病原体等安全管理規定について
  四 エーロゾルについて(この項 武藤徹)
  五 バイオテクノロジーの危険性について
  六 立証責任について
  七 高裁判決の特徴
  八 バイオ時代の人権

第六章 バイオハザード裁判が予見したこと(本庄重男)
  一 バイオ時代の安全問題
  二 予研/感染研の横暴さ
  三 裁判判決の不当さ
  四 最近発生・露見したバイオハザード関連事件
  五 原告市民の主張の不当性

第七章 今後の課題
  一 相次ぐ住民による異議申し立てとバイオ施設のずさんな安全管理実態
  二 二つの裁判の確定判決の意義
  三 遺伝子組換え生物等規制法令、改正感染症法令の問題点
   (1)遺伝子組換え生物等規制法令/(2)改正感染症法令/(3)法令の抜本的な改正が必要
  四 地方自治体、住民で取り組む
   (1)モニタリングと疫学調査の実施を求める/(2)条例を制定する/(3)開かれたリスクコミュニケーションの仕組みをつくる

第八章 座談会
  科学論争/予研=感染研裁判と早稲田大学/一審の総括/高裁判決の総括/研究所内部から見た予研裁判/他の運動への貢献/住民の立場から/感染研は再移転して範を示せ

資料
 国立感染症研究所の査察鑑定書(要旨)
 国立感染症研究所の立地条件:公衆の健康と安全にとっての危険についての補論
 控訴理由書
 上告理由書
 「バイオハザード予防のための法律条例試案」集
 年表
 参考文献
 あとがき(伊東一郎)

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