書誌情報

植物誌入門―多様性と生態

岩田好宏[著]
四六判並製/304頁/3000円
ISBN978-4-8461-1011-6 C0045

 普段、何気なく見過ごしている身近な雑草や植木。人間が自分に都合よく取り扱っているこれらの植物もみな生きています。私たち人間は、植物も含めた大きな生態系の中に生きているのです。生物多様性が失われつつあるいま、私たちも自然への関わり方、ライフスタイルを含めた生きかたを考え直す曲がり角にきています。  本書は、植物を語り手として、植物の立場から、植物の世界を描いたものです。長年にわたる植物観察を通して見えてきた、植物の生きかた、生態、多様性、人間との関わりなどを丁寧に解説しています。人間が自分勝手に扱っている植物との関わりが、いかに生態系を脅かしているか、考えさせられる書です。(2010.8)


■目次
 はじめに─私は植物、生きています

一章 植物の「生きる」とは
 一、ツルヨシと水辺の植物
  ツルヨシと水際の植物/ツルヨシのからだと生活のしかた/山中湖のツルヨシ
  ツルヨシとヨシの「すみわけ」/波のおだやかな湾内での植物分布

 二、海岸砂丘の植物たち
  コウボウムギ─好砂植物/ハマボウフウ/海浜植物の帯状分布

 三、校庭の植物

 四、カタクリ
  スプリング・エフェメラル/少ない栄養を少なく使う生活

 五、帰化植物
  帰化植物とは/移入から帰化まで/帰化の人間的問題と植物的問題

 六、植物遷移
  農村の田畑の変化から/実際に調べる/火山爆発のあとの遷移/遷移とはどのような植物変化か
  遷移を進めるもと/遷移が中断され、もとに戻るのは

 七、おわりに

二章 植物の光をめぐる争い
 一、植物の基本構造── 植物群落の生産構造
  門司・佐伯研究との出会い/植物の基本構造──生産構造/なぜ生産構造図というか

 二、相対照度から生産構造図を描く試み
  相対照度と積算葉量/パイプモデル説

 三、生産構造図から物質経済を読み取る
  数学モデル/積み上げ方式

 四、生活の基礎としての物質経済
  草原・森林の葉面積密度/植物の経済生活を具体的にみる

 五、植物の光をめぐる争い
  なかま争い/なかま争いはあった/争いに勝つのも生活がきびしい/争いの過程を調べる
  茎の太さの意味/なかま争いの結果と優劣を決める要因

 おわりに
  環境が異なれば物質経済も変わる

三章 光合成という生活様式
 一、光合成の生物的定義
  生体原物質

 二、光合成は炭素と水を結合させる反応ではない

 三、光合成はエネルギー反応

 四、光合成明反応
  葉が光をうけると/光化学反応/電子伝達というはたらき

 五、光合成暗反応
  生体原物質から流通・貯蔵物質へ

 六、生体物質の利用その一──エネルギーの取り出し
  物質代謝/エネルギーをとり出すはたらき──呼吸/ミトコンドリア

 七、生体原物質の利用その二──生体物質の合成
  四種の生体基本物質

 八、タンパク質の合成
  遺伝物質(タンパク質合成情報保存物質)と表現物質(機能・構造物質)
  タンパク質合成過程

 おわりに

四章 生きかたの発展──生育
 一、台倉のクロモジ

 二、茎に注目する
  茎は生育の基礎

 三、樹木の生育
  生育単位の基本形/生育単位における頂端集中度(分枝様式)
  生育要素としての枝の検討──育略的枝と育術的枝

 四、樹形形成の基本
  シラカシの幼樹との出会い/先細り現象──ケヤキの場合/ヒサカキ/主幹と樹形形成

 五、低木という生育様式
  低木とは/マンリョウ/オオアリドオシとハナイカダ/キブシ/ニワトコ
  ナガバノコウヤボウキ──限りなく草に近い低木/サルトリイバラとナワシロイチゴ

 六、高木か低木か
  低木の類型化/モウソウチク/低木になるには/低木のくらし

 おわりに

五章 あらたな世界づくり─陸上生活
 一、陸上生活の第一歩
  雨後の植物、三種/陸上植物の地球環境基盤の形成と最初の陸上生活/陸上植物の祖先型を調べる

 二、二つの陸上植物の進化の分岐点
  コケ植物とシダ植物への分化/コケ植物の生活の基本

 三、葉の起原

 四、種子・花とその起原
  種子とは/生活史の比較から進化を考える/種子形成と花

 五、植物の水生活
  植物の水経済/体内・細胞内の水の状態/細胞の水の吸収・排出/植物体の水問題

 六、砂漠、高温・乾燥地帯の光合成
  砂漠とサボテン/砂漠の一瞬のお花畑/もう一つの砂漠植物
  二酸化炭素を吸収するが水の消失を減らす方法

 おわりに

六章 植物世界の形成
 一、藻類のくらし

 二、生物世界の起原
  原始生物世界から真生物世界へ/性の始まり、種分化は個体の確立を基礎に同時的に
  最初の自給栄養生物

 三、原核植物から真核植物へ
  藍藻類は植物/植物時代とは/原核から真核への契機になった生物体融合/合体の過程
  真核生物への進化の進行順序/のみ込んだ生物とのみ込まれた生物

 四、藻類世界の形成
  最初の真核生物が現われた時代/真核植物の出現は二度の合体による/動物なのか植物なのか
  奇妙な藻類、ハテナ

 五、藻類の系統分類を試みる
  系統分類はいくつもできる

 六、藻類、二つ目の大きな進化
  生きもの世界の原形ができる/細胞性生物の出現/細胞性藻類の始まり

 七、植物の繁殖と性・雌雄性の起原
  クラミドモナスの性/植物の性と雌雄性の実態/おす・めすの区別を明確にする

 おわりに

七章 農村と植物・人間──植物、人間と語る その一
 一、農耕生活をめぐって
  農耕自然における植物/焼畑農耕/農村と生物多様性/寺社林
  植物がなぜ人間との関係をみるのか?/人間、まず奇妙な生きものとして
  人間、驚きの存在/人間、恐るべき存在

 まとめ

八章 都市と植物・人間──植物、人間と語る その二
 一、ある都市公園構想
  都市のなかの自然公園/野生区について/農村区をどうするか/新しい管理・運営をめざして
  自由区について/都市環境は道具の集積/道具疎外/農村環境は道具の集積ではない
  子どもの自然

 二、都市環境
  物質系としての都市/生態系としての都市/道具の集積であることの意味

 三、都市公園の未来像
  自由なはたらきかけを

九章 野生生物と生物多様性──植物、人間と語る その三
 一、野生とは野山に生息している状態ではない
  野生生物と野山の生物/野生とは

 二、トキ保護活動をめぐって
  絶滅危機の自然的要因をめぐって/人間の立場からの生物多様性保全
  なぜ野生生物を保全しなければならないのか/精神文化の源泉としての野生生物
  人間の生きかたとしての野生生物保全/野生生物保全としての生活とは
  再び生物多様性について

あとがき

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