東大闘争と原発事故―廃墟からの問い

¥ 2,500 (税別)

書籍内容

折原浩・熊本一規・三宅弘・清水靖久[著]
四六判上製/304頁/2500円+税
ISBN978-4-8461-1316-2 C0036

東日本大震災と原発事故で言葉を失った経験を忘れないようにしたい。荒れはてた廃墟を前にして、何かが間違っていたのではないかと私たちは考えた。福島の原発事故は、とくに科学者への不信をかきたてた。事故直後テレビ番組で解説した大学教授たちは、原発を推進してきた利益関係者だったからか、メルトダウンの事実を直視できなかった。この人たちは、業界や権力と癒着して、開くべき口も開かず、科学者としての判断力さえ鈍らせていたのではないか。そのような科学者の責任が問われたのが大学闘争であり、東大闘争であった。彼らはそのとき学生だったのに、何を学んだのか、何か忘れないでいたことがあるだろうか。
大学闘争を闘った学生自身が大学闘争についてもっと語ってほしい。あれは何だったのか、大学が廃墟となった経緯と問題について、廃墟のあとの経過について、十分に明らかにされていない。本書は各地の大学闘争のうち、東大闘争から考えることを試みる。1945年の第一の廃墟からだけでなく、1969年の第二の廃墟から、現在の第三の廃墟を考える。大学闘争を闘った学生たちが語り出すとき、ともに歴史をつくっていくことができるだろう。(2013.07)

■内容構成
はじめに
第1章  授業拒否とその前後──東大闘争へのかかわり(折原浩)
はじめに
一 「六○年安保」と教官のデモ
二 「大管法」と「国大協・自主規制路線」
三 「マックス・ヴェーバー生誕百年記念シンポジウム」
四 教養課程の理念と現実
五 入学式防衛から機動隊導入まで
六 コミュニケーションの途絶と学生の追及
七 占拠学生からのヒアリング
八 「境界人」として
九 「春見事件」と「医学部処分」
一○ 「教育的処分」の「革命的」廃棄と「国大協路線」
一一 「粒良処分」の事後処理
一二 「東大解体論」の発端
一三 「文学部処分」と「十月四日事件」
一四 「文処分」解除と「教育的見地」
一五 「理性の府」神話の崩壊──「大学解体論」と「自己否定論」の想源
一六 当局と全共闘との政治的「同位対立」と「収拾連合」の形成
一七 「一・一八~一九機動隊導入」
一八 全共闘支持の原則決定──「境界人」から闘いへ
一九 授業拒否──再争点化に向けての「捨て身」戦術
二○ 実力行使の意義と落し穴──教官追及への呼応と黙示的反批判
二一 「文学部闘争」の継続
二二 「東大裁判闘争」
二三 「解放連続シンポジウム『闘争と学問』」
二四 人事院闘争と「教官共済基金」構想
二五 『ぷろじぇ』同人の企画と「自己否定」のディレンマ・69
二六 授業拒否の敗北と総括
二七 授業再開と「公開自主講座『人間―社会論』」
二八 ヴェーバー研究の動機と東大闘争
二九 ヴェーバーの「比較歴史社会学」──「欧米近代」の来し方・行く末
三○ ヴェーバーの科学論と「責任倫理」要請
三一 「合理化」と「神々の争い」
三二 「合理化」と「文明人」のディレンマ
むすび
第2章  さまざまな不服従(清水靖久)
一 授業再開拒否
二 造反教官たち
三 振袖火事
四 大気圏突入
第3章 「主張することと立証すること」から原子力情報の公開を求めて(三宅弘)
はじめに
一 テレビで視た安田講堂攻防戦から一九七二年東大入学まで
二 一九七二年東大入学から折原ゼミ受講まで
三 折原ゼミ受講から東大裁判傍聴まで
四 東大闘争・全国学園闘争から公害闘争・住民運動・市民運動へ
五 「東大闘争資料センター」設立趣旨
六 東大闘争資料センターでの資料整理から見えてきたもの
(一) 二つの事実誤認と自己否定的反テクノクラート
(二) 滝沢─山本往復書簡から山本氏が探求してきたこと
(三) 滝沢教授が折原助教授のヴェーバー研究に問いかけたこと
七 資料センターから垣間見た丸山─折原論争
(一) 丸山眞男氏の折原宛一通の葉書
(二) 高畠通敏論文「職業としての政治学者」が問いかけたこと
(三) 政治学から弁護士へ
八 弁護士・市民科学者として生きる・
(一) 原子力情報の公開を視野に入れた情報公開法制定運動へ
(二)  ラルフ・ネーダー弁護士の運動論に学ぶ
(三) 日本の消費者運動・市民運動を担った人々との出会い
九 原子力情報の公開を求めて
(一) 情報公開法制定運動の成果としての原子力情報の公開
(二) 3・11により開かれた「パンドラの箱」
(三) 希望的観測を述べるにとどまった科学者たち
(四) 山本義隆『一六世紀文化革命』から科学と科学者のあり方を問う
一〇 原子力情報の公開のためにも求められる情報公開法改正
(一) 司法・法律学者は3・11福島第一原発事故を防ぐ理論構築に至らなかった
(二) 情報公開法の改正を求めて

第4章 東大闘争から「いのちと共生」へ(熊本一規)
一 反原発運動の黎明期
熊取六人衆と七〇年代の反原発運動/原発問題への関わり
二 東大闘争から漁民・住民のサポートへ
東大闘争の経験/帝大解体・自己否定/解放連続シンポジウム『闘争と学問』
都市工学科への進学/エチル化学労組の映画づくり/都市工学科大学院で
新しい学問/漁民・住民運動の現場へ/漁業権と埋立・ダム・原発
三 「漁民・住民が握る学問」は可能か
志を貫いている人たち/「いい研究」とは何か/住民運動内部及び支援の問題点
四 「いのちと共生」の国へ
共生の思想と新自由主義/いのちか経済か/「いのちと共生」の国デンマーク
「いのちと共生」をめざして
あとがき

納品について

版種類

印刷製本版, 電子書籍版

レビュー

レビューはまだありません。

“東大闘争と原発事故―廃墟からの問い” の口コミを投稿します