ダイオキシンの怖さ

◉『朝日新聞』2008年1月9日夕刊より

 欧米に比べて立ち遅れたわが国もようやくこの10年、ダイオキシン対策に取り組んできた。だが、このところ「ダイオキシンは空騒ぎ」といった論調の本や報道が相次ぐ。その中心的な論客たちの主張を詳細に分析し、徹底的に反論している。
 欧州連合(EU)は01年、最新の知見を採用し、ダイオキシンの耐容摂取量をより厳しくした。そんな世界の流れに逆行するような国内の論調への危機感から筆をとった。「ダイオキシンはあくまで象徴的な事例であり、その向こう側にある問題を知ってほしい」と長山さんはいう。
 長山さんの論争相手は、いずれも国の科学研究の方向づけに影響力をもつ著名な学者である。収録された議論の応酬からは、環境問題に取り組む科学者の姿勢の違いが鮮明に浮かび上がる。
 この国の行方を考えるためにも、ぜひ一読をすすめたい。


(評者:大矢雅弘「窓・論説委員室から」欄)