旧態依然の河川行政への重い宿題

◉『毎日新聞』2013年5月5日付

 (…) 治水、利水、環境への影響などを多角的に検証し、ダムが止まらない原因に迫る。
 本書のもととなったのは、北海道自然保護協会をはじめ市民団体でつくる「北海道脱ダムをめざす会」が10〜11年、住民の立場で独自に事業の必要性を再検証した結果だ。全国的にも珍しいこの取り組みを、専門家の協力を受けて充実させた。データに基づいて問題点を列挙し、表題の「虚構」ぶりを立証しようとしている。
 しかし、現実は厳しい。反対意見は見直しの場から締め出され、事業の推進という自治体や議会の〝民意〟を盾に、形式的な検証だけで継続が決まった。看板倒れに終わった「脱ダム」を問い直すと共に、「環境」と「住民参加」の観点が盛り込まれた改正河川法の形骸化に警鐘を鳴らす。「川を住民の手にとりもどす」という結びの提言は、旧態依然の河川行政への重い宿題だ。 【信】