虚構に基づくダム建設─北海道のダムを検証する

¥ 2,500 (税別)

商品コード: 1307-0 カテゴリー: , , ,

書籍内容

北海道自然保護協会[編]
四六判上製/328頁/2500円+税
ISBN978-4-8461-1307-0 C0007

ダムは、それがある限り河川環境を悪化させ、しかもダムの寿命は100年ほどである。ダムを造るにも大きな費用が必要であるが、取り壊すにも大きな費用がかかる。
北海道でも、必要性のないムダなダム建設が強行され、豊かな自然が破壊されている。本書で取り上げる天塩川水系のサンルダム、沙流川の平取ダム、当別川の当別ダムはその典型である。これらの河川の過去と現在を紹介し、失われたものの重要性を考え、国民の多くがダム建設に懐疑的な中でダム建設が止まらない原因を明らかにし、川を国民に取り戻すにはどうすればいいかを提言する。(2013.03)

■内容構成
まえがき
3・11から学んだ人と自然の關係
ドイツの脱原発に関する「倫理委員会」報告に学ぶ
本書について
高度経済成長期以降急速に失われた河川環境
本書の構成

第一章 人と川
第一節 子どもたちと川 過去を振り返る
第二節 最北の大河 天塩川の象徴、サンル川
1 サンル川とは?
2 サンルダム建設へ向けての経過
第三節 アイヌ民族の聖地を流れる沙流川
1 二風谷ダム建設までの沙流川
2 アイヌ民族と沙流川
第四節 当別町のみを流れる当別川
1 当別川と青山ダム
2 当別川実地調査と聴き取り
第二章 ダムをめぐる状況
第一節 治水事業を捻じ曲げたダム事業
第二節 日本におけるダム建設をめぐる状況
1 ダム建設の必要性の減少
2 治水
3 水道水、工業用水及び農業用水
4 流水の正常な機能の維持
第三節 ダムによる環境破壊
1 ダムによるサクラマス漁獲量の減少
2 砂防ダム─治山ダムによるサクラマスの減少
3 ダムの堆砂に伴う下流域の濁り、底質の泥化、河床低下および海岸線の後退
4 ダム建設の問題点
第四節 ダム撤去の時代
1 アメリカのエルワダムとクラインズキャニオンダムの撤去
2 荒瀬ダム撤去
3 荒瀬ダムの影響
4 荒瀬ダムから学ぶもの
第三章 サンルダムの検証
第一節 サンルダム事業の経過と事業の概要
1 事業概要と経過
2 地域の状況
3 開発局の治水対策案への疑問
第二節 天塩川河川整備計画の概要
1 治水目標
2 利水目標
第三節 治水の検証
1 戦後最大の洪水の検証
2 下川町の水害対策にサンルダムは役立たない
3 名寄川真勲別の目標流量の疑問
4 堤防整備と河道改修による名寄川の治水対策
5 美深~音威子府区間の治水対策を優先すべきである
6 耐越水堤防の建設
7 天塩川水系の治水の提案
第四節 利水の検証
1 水道水
2 流水の正常な機能の維持
第五節 サクラマス保全とサンルダム
1 サクラマスとシロザケの生活史と放流効果の違い
2 北海道における大型ダム既設魚道とサクラマス保全
3 サンル川の特徴とサンルダム魚道の問題点
第六節 サンルダム建設ではなく地域住民の要望の重視を
1 流域住民の民意の重視
2 名寄川の治水
3 その他の課題
第四章 平取ダムの検証
第一節 沙流川の治水の検証
1 二〇〇三年八月台風と目標流量
2 二風谷ダムの堆砂問題
3 平取ダムの堆砂問題
4 ダム下流の水害の頻発
5 治水のまとめ
第二節 利水の検証
1 水道水
2 流水の正常な機能の維持
第三節 沙流川の環境問題
1 水底質
2 サクラマスの遡上・降下障害
第四節 アイヌ民族問題
第五章 当別ダムの検証
第一節 治水の検証
1 治水目標
2 戦後最大の洪水の検証
3 恣意的に決められた基本高水
4 治水のまとめと私たちの提案する治水対策─当別川治水計画の重大な問題点
第二節 利水の検証
1 水道水
2 豊平川水道水源水質保全事業(バイパス事業)
3 札幌市の過大な水道水補給量予測
4 札幌市の財政に与える影響
5 札幌市水道計画のまとめ
6 石狩市、小樽市および当別町の水道水問題
7 流水の正常な機能の維持
8 灌漑用水
第三節 当別断層
第四節 当別川の環境問題
1 当別川と当別ダムの水質
2 当別川の環境改善
3 終わりに
第六章 止まらないダム建設のからくり
第一節 河川法とダム
1 河川の整備の基本となるべき事項
2 治水
3 ダムの増量剤である「流水の正常な機能の維持」
4 「想定」という虚構に基づくダムづくり
第二節 費用対効果の検討
1 費用対効果算定の歴史
2 洪水被害軽減の便益
3 流水の正常な機能の維持便益
4 治水と流水の正常な機能の維持の開発側の費用便益と私たちの費用便益
5 環境問題の費用対効果
6 費用対効果のまとめ
第三節 水利権問題
1 極めてわずかな水道水量のためにダムを建設しなければならない不思議
2 水道水の費用便益比に関する計算例
第四節 批判的意見に耳を傾けないダム事業者(北海道開発局・北海道)の問題点
1 サンルダム問題について市民団体との会談を拒否し続けた旭川開発建設部
2 形骸化している再評価委員会(当別ダムの場合)
3 便宜供与
第五節 まとめ
第七章 民主的な河川管理へ
第一節 住民と河川問題
1 水害と治水事業の変遷
2  巨大公共事業で地域活性化を狙う
3 サンルダム建設目的の変遷
4 「想定」がダムを造りだす
5 開発局の説明不能
6 川を住民の手に
第二節 民主党政権のダム問題の変節─有識者会議を隠れ蓑にした反民主的ダム行政
1 有識者会議の経過と役割
2「中間とりまとめ」の問題点
3 有識者会議のおそまつ
4 有識者会議の廃止と民主的に公開して検討する組織の設置の要望
第三節 川を住民の手にとりもどすために
1  河川管理者の住民不在から住民本位の姿勢への転換
2 民主的検討会
3 民主的な検討組織の設置

あとがき

納品について

版種類

印刷製本版, 電子書籍版

書評

旧態依然の河川行政への重い宿題

(…) 治水、利水、環境への影響などを多角的に検証し、ダムが止まらない原因に迫る。 本書のもととなったのは、北海道自然保護協会をはじめ市民団体でつくる「北海道脱ダムをめざす会」が10〜11年、住民の立場で独自に事業の必要性を再検証した結果だ。全国的にも珍しいこの取り組みを、専門家の協力を受けて充実させた。データに基づいて問題点を列挙し、表題の「虚構」ぶりを立証しようとしている。 しかし、現実は厳しい。反対意見は見直しの場から締め出され、事業の推進という自治体や議会の〝民意〟を盾に、形式的な検証だけで継続が決まった。看板倒れに終わった「脱ダム」を問い直すと共に、「環境」と「住民参加」の観点が盛り込まれた改正河川法の形骸化に警鐘を鳴らす。「川を住民の手にとりもどす」という結びの提言は、旧態依然の河川行政への重い宿題だ。 【信】

◉『毎日新聞』2013年5月5日付より。

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