〈記者クラブ〉を標的としたドキュメンタリであり研究書

◉『週刊読書人』2011年4月8日付

 (…)著者のいう「選ばれた有力新聞グループによる取材源とニュース市場の独占を推進するための重要なメカニズム」である記者クラブを、歴史的経緯を辿ったうえでその現状を詳細に紹介しており、読み物としてまずもって面白い。(…)「報道コントロール」を実行する社会的制度としての三つの K、すなわち記者クラブ・業界団体(新聞協会)・メディア系列に焦点を当てた分析が、研究書としての特徴でありユニークさだ。個人ではなくグループをベースとしての取材源との関係の涵養、それを固定・強化しさらに拡大する役割を担う新聞協会と新聞・放送間の支配関係が果たす役割、これらがおそらくは外国研究者ゆえの醒めた観察眼によって有効に働いている。(…)著者がいみじくも指摘するように記者クラブが日本の伝統メディアの象徴であり、その報道が持つ功罪を議論するに最適な素材であることは微塵も変わっていない。それゆえに、伝統メディアの中でもとりわけ「新聞」と政治の関係に関する分析の結果、まさに「情報カルテル」が存在していることが本書によって証明されている事実を、日本の報道関係者がどのように受け止めるかが問われることになるだろう。(…)本書の視点は著者が意識しているか否かは分からないものの、アメリカン・ジャーナリズムを善としてその比較のうえでなされている評価に基づくものがある。こうした事実適示や立ち位置について評者はむしろ否定的であるが、それを超えて日本の既存メディアのありようや、その結果奪われ続けている読者・視聴者の知る権利を考える上で本書は貴重な示唆を与えてくれている。


山田健太(専修大学准教授・言論法専攻)