記者クラブ─情報カルテル

¥ 3,000 (税別)

書籍内容

ローリー・アン・フリーマン[著] 橋場義之[訳]
四六判上製/360頁/3000円+税
ISBN978-4-8461-1018-5 C0036

日本のメディアは記者クラブや新聞協会、メディアグループなどがつくり出す「情報カルテル」によって支配されている。この情報カルテルは、報道されるニュースの種類や報道に携わる者の数と構成を制限し、記者と公的取材源との密接な関係をつくり出し、独自報道をする記者とメディアの能力を制限し、政治によって操作・支配されている。その結果、「報道の自由」が事実上制限され、国民は真実を知ることができず、民主社会の発展を阻害しているのである。
本書は記者クラブ制度を軸にした情報カルテルの歴史と実態を実証的、批判的に明らかにする。(2011.1)

目次

第1章 メディアを取り込む
1 なぜメディアが問題か
2 メディアと政治プロセス:関係論的アプローチ
関係論的見地からみたメディア/日本のコネ社会
3 第四の権力か、それとも国家のためか 日本における報道
コントロールの重要な制度
4 全国紙と日本のメディア産業
5 日本の報道機関の役割は?

第2章 歴史にみるプレス、政治、市民
1 先例
2 新聞と国家の結びつきの確立
財政基盤を支える/新聞をコントロールする法的・超法規的手段
日本の〝公僕〟たちが共有していた信念と目標
3 新聞と政府の関係の要約:一八六八~一八九〇年
「御用新聞」の成立/「政論新聞」の盛衰/「独立新聞」の誕生/支配的な組織形態の台頭/まとめ
4 情報カルテルの出現:明治から敗戦まで
最初の公式の記者クラブ/統制を巡る闘い:新聞社、記者クラブ、取材源/軍国主義下の記者クラブ
戦後の記者クラブの再生:制度の継続性に関する議論
5 過去の歩みに依存していることの重要さ

第3章 日本の情報カルテル─第1部 競争と排除
1 競争、協力と〝情報市場〟
2 戦後の記者クラブとクラブ・ジャーナリズム
3 閉鎖的な組織:情報カルテルとしての記者クラブ
4 市民に対する共謀

第4章 日本の情報カルテル─第2部 規約と制裁を通じた関係の構築
1 相互に作用する規約の策定
公式のルール/非公式なルールとその他のルール/非公式なルールとパック・ジャーナリズム
ケーススタディ:文部省クラブ/ルールの機能:簡短な要約
2 制裁の主要な役割
記者クラブによる制裁/取材源による制裁/制裁についての考察/違反者を探しあてる
3 ルールのネガティブな影響

第5章 網の目の拡大:新聞協会と系列の役割
1 日本新聞協会
日本新聞協会と記者クラブ問題/ケーススタディ:皇太子妃探しにおけるニュースの管理
2 メディア系列
3 結論

第6章 なぜ情報カルテルが問題なのか
1 メディアの喩え
2 日本の情報カルテルがもたらしたもの
事実の保証/政治監視機能の弱体化/議題設定プロセスの制限/代替メディアの周縁化
ニュースと意見の画一化
3 日本はどれくらい例外か?
4 回顧と展望
5 だれがメディアの議題を設定するのか?

補遺A 国会記者会規約
補遺B 北見記者会司法クラブ規約
補遺C 宮内庁雑誌記者クラブ協定の足跡
補遺D イギリスのロビーとの比較

原注
解題
訳者あとがき

納品について

版種類

印刷製本版, 電子書籍版

書評

〈記者クラブ〉を標的としたドキュメンタリであり研究書

(…)著者のいう「選ばれた有力新聞グループによる取材源とニュース市場の独占を推進するための重要なメカニズム」である記者クラブを、歴史的経緯を辿ったうえでその現状を詳細に紹介しており、読み物としてまずもって面白い。(…)「報道コントロール」を実行する社会的制度としての三つの K、すなわち記者クラブ・業界団体(新聞協会)・メディア系列に焦点を当てた分析が、研究書としての特徴でありユニークさだ。個人ではなくグループをベースとしての取材源との関係の涵養、それを固定・強化しさらに拡大する役割を担う新聞協会と新聞・放送間の支配関係が果たす役割、これらがおそらくは外国研究者ゆえの醒めた観察眼によって有効に働いている。(…)著者がいみじくも指摘するように記者クラブが日本の伝統メディアの象徴であり、その報道が持つ功罪を議論するに最適な素材であることは微塵も変わっていない。それゆえに、伝統メディアの中でもとりわけ「新聞」と政治の関係に関する分析の結果、まさに「情報カルテル」が存在していることが本書によって証明されている事実を、日本の報道関係者がどのように受け止めるかが問われることになるだろう。(…)本書の視点は著者が意識しているか否かは分からないものの、アメリカン・ジャーナリズムを善としてその比較のうえでなされている評価に基づくものがある。こうした事実適示や立ち位置について評者はむしろ否定的であるが、それを超えて日本の既存メディアのありようや、その結果奪われ続けている読者・視聴者の知る権利を考える上で本書は貴重な示唆を与えてくれている。

山田健太(専修大学准教授・言論法専攻)
◉『週刊読書人』2011年4月8日付

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