協力企業の汚染、乱開発告発

◉『北海道新聞』2016年 2 月8日朝刊より

 遺伝子組み換え種子と農薬散布のため、土壌が痛んでいく広大な大豆畑。大規模養殖の結果、起きたサケの大量死。パームヤシのプランテーションを造るため、大規模に切られる原生林、すみかを失って移住を余儀なくされる現地の人々。いずれも深刻な事態だが、WWF はこうした大企業から大金を受け取り、免罪符を発行していると著者は主張する。(…)各国の貴族や大企業のトップが創立した WWF は、今も非公開の組織が大きな力を持っていると著者はみる。「陰謀論」の一種かと疑いながら読んでゆくと、関係者から入手したメンバーの名簿の写真が掲載されている。確かに社会的地位の高い人々が名を連ねている。巨大組織の闇が透けて見える。
 原書は2012年にドイツ語で刊行された。これに対し WWF ドイツが販売差し止め訴訟を起こし、一部を削除することで解決したといういきさつがある、訳書もこれを反映しているが、言葉を換えれば、その他の記載は裁判所が認めるほど信頼性が高いと言える。


【橘井潤・北海道新聞編集委員】