書籍内容
エリック・ローラン[著]/神尾賢二[訳]
四六判上製/452頁/3400円+税
ISBN978-4-8461-0708-6 C0031
石油は、これまで絶えず世界の主要な紛争と戦争の原因であり、今後も多くの秘密と謎に包まれ続けるに違いない。本書は、世論を巧妙に欺いてきた石油の謎をはじめて明らかにしたものである。
1973年のオイルショックは、産油国と国際石油資本との了解による操作だった。世界の石油埋蔵量に関する数字は、まったくのでたらめで、産油国によって都合よく水増しされている。サウジアラビアとロシアではその正確な数字が国家機密扱いになっている。米国は、ソビエト連邦崩壊を引き起こすためにサウジ石油を武器に使った。 9.11事件の6カ月前の2001年3月に、石油開発予定区域を線引きしたイラク地図が、チェイニー米副大統領と石油資本の代表らが組織する「秘密委員会」で作成されていた。1日6バレル消費するごとに1バレルしか発見できない石油の浪費と逼迫状況は、前例のないオイルショックの前夜といえる。
これらの謎を解く本書は、世界の要人と石油の黒幕たちへの三十数年にわたる直接取材をもとに、石油が動かす現代世界の戦慄すべき姿を明らかにする。(2007.6)
■目次
日本語版のための前書き
謝辞
はじめに
第一章 現実と対決しない世界
石油不足は一度も起きていない/巧妙に隠蔽された一つの真実/「石油漬けのアメリカ」
すべての元凶はOPEC/シャーの復讐/CIAが動き出す/「一バレル一ドルで百万バレル」
「シャー体制は安泰だ」
第二章 一八五九年、最初の掘削と石油の噴出
水より安い石油/世界の消費量六百万トン/百七十キロの舗装道路/石油は計画の核
「支払い方法は?」/「攻撃的外交政策が必要である」/秘密外交/「泥棒と破産者の野合」
「欧米を制する三百人」/「黒い黄金の大海を泳ぎまわる」/「友好的に、そしてより有益に」搾取する
OPEC以前の三十一年/ナチスとの同盟/「過渡的現象としての戦争」/罰金五万ドル・79
第三章 アルベルト・シュペアーとの出会い
「あれは虚偽だと申し上げる」/「ヒットラーから個人的に言い渡された」
「われわれは石油を求めてロシアに侵攻した」/「われわれは夢想家だった」/「石油と戦争の世紀」
「精神の挫折」/石油不足の強迫観念/「欧米が仕組んだ陰謀」/ナセルはヒットラーだ
「文明の生命線」/年収一千万ドル
第四章 「石油は私たちのものではなかった」
「石油と安い水」/一バレル当たり一・二〇ドルから一・八〇ドル/アメリカ政府のへつらい
「表ならこちらが勝ち、裏ならそちらが負け」/「赤い首長」/やりすぎ/「OPECは存在しない」
「わざと損害をこうむったことにされるがよい」/「石油業界のゴッドファーザー」
CIAはOPECを二行で片付けていた
第五章 大変化の源、リビア
実業界最大のベンチャー企業家/カダフィの憎悪/枢軸国より多い石油/締まる万力
国際石油資本の決定的誤り/退却か敗走かの選択/「みんな私から離れていった
第六章 石油への病的食欲
「やるか、やられるか」/「世界は唖になった」/「世界で一番有名」/奇妙な経験
煽られる危機/「奇跡的偶然」/値上げへのゴーサイン
「調査は全部、スフレのように萎んでしまうだろう」
第七章 王国の唯一の資源:巡礼者たち
イブン・サウドは水が欲しかった/「われわれには少し遠すぎる」/イブン・サウドの幻想
チャーチルのはったり/石油が産業を飛躍させる/アメリカの敵からの激励
アメリカの石油は一九七〇年以降衰退した/完全に安全に汲み出せる石油
アメリカの戦略に不可欠な駒/サウジの不安な石油事情/新たな鉱床は無い
発見油田数のウソ
第八章 モスクワのボイコット破り
テヘランがイスラエルと共同オーナー/エクソンの売り上げの三分の一
ソ連は「消滅」すべきである/「彼らはわれわれの石油が欲しい」/石油の値段を下げよ
ビン・ラディンの代父/「人は愚かさで金を買う」/経済麻痺を加速せよ
モスクワが最初に刀を抜いた/ブッシュの独走/ブッシュがサウジ人の眼前でレーガンに反論
ロウブロー一発/ブッシュとそのネットワークの勝利
第九章 挑発と裏切り
すべての石油の二十パーセント/「サウジアラビアは目と鼻の先」/ぬいぐるみの熊
兵士総員二千五百名、後にも先にもそれだけ/チェイニーのひらめき/ブッシュ戦略の核、石油
「いずれ枯れるのが石油採掘の特性」/「追加五千万バレル」/一バレル発見するごとに六バレル消費
「尻を蹴飛ばす方が楽しい」/「秘密社会」/「9・11の六ヵ月前」
アメリカは平和と民主主義を定着させるために来た/石油界の重鎮とCIAのトップ
公表よりはるかに少ない資源
第十章 サウジアラビア石油生産の衰退
「見合い結婚」/「妻は仕事場ではスターです」/虚偽の数字/埋蔵量の四十六パーセントが虚偽
「輝き無き未来」/「掘りつくされた」惑星/もし……/低下する生産/罹災した石油産業
第十一章 地獄に堕ちたシェル
「大いに議論すべき」数字/能力の限界に達したOPEC/「サウジはどれだけ信用できるのか?」
世界は石油不足に備えよ/サウジの石油は「すぐに底をつく」/「エネルギーの津波」
サウジの増産は不可能
第十二章 中国、支配の世紀
増加する中国の犠牲者たち/エネルギー絶対優先/低賃金労働力として使われる農民
頤和園のそばの党学校/「中国の立場と懸念」/「威圧的かつ驚愕的」
「中国は今のうちに叩いておけ」/「張子の虎」/「中国の石油外交」
第十三章 帝国の中心
恐怖の国/独裁同族権力/一年分だけの消費量/まだ儲けを増やす/チェイニーと会う
第十四章 「この地域に起こることはすべて心配だ」
エルドラドと地獄/「石油で変わるのは指導者の生活だけだ」/選挙で選ばれた大統領を倒す
石油企業とKGB議長の結託/アリエフは「何十億ドルも動かす」/「ここでは何でも金次第」
最大の石油設備投資/つねに監視するスパイ衛星/BPへの激しい糾弾/財政破綻の恐れ
エコロジーへの大きな脅威/四十キロメートル行けば八十年前に戻る
第十五章 ヨダとジェダイ
彼はすべての時代を生きてきた/「気候の崩壊」/「石油ロビーとペンタゴン」
報告書を修正したホワイトハウス/ホワイトハウスの盲目性
「想像できないことを想像する」(ペンタゴンリポート抜粋)
それほど非現実的ではないリポート/壊滅的結果/ドバイのネパール人出稼ぎ労働者
第十六章 石油と投機家
特別指名手配犯十人中の一人/「エル・マタドール」/投機一本槍/五十倍以上で転売した積荷
法の上を行く/「誰もが金を要求する」/不正に手に入れた九十億ドル/輝ける未来
寡占資本家に好かれるリッチ/百五十億ドル/枯渇寸前の埋蔵量/「今はロシアが一番居心地が良い」
第十七章 依存度に対応した盲目性
「欧米の頸動脈」/数百メートル隔てたエネルギー欠乏/まやかしの言説/運輸と食品と汚染
食料品年間千百三十四トン/遍在する石油/コンピューターのための石油/欺瞞と情報の歪曲
参考文献
訳者あとがき
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