書籍内容
山口研一郎[編著]
A5判並製/256頁/2400円+税
ISBN978-4-8461-1014-7 C0036
現代医療は、先端医学の発展で、「生命の操作」にまで及び、「神」の領域に踏み込みつつある。「脳死」「臓器移植」「再生医療」などは、人類の未来や命の本質を左右しかねない問題を含んでいる。生命とは、死とは、人間とは何なのか? そうした議論をつくさないまま企業の論理も介在し、状況はどんどんすすんでいく。
本書は、5人の専門家が、それぞれの立場から、現在置かれている生命の状況を踏まえ、医療のあり方、それを取り巻く国や企業の動き、生命観、宗教観など、人体リサイクル社会の問題点を幅広く論ずる。(2010.12)
■目次
はじめに 山口研一郎
第1章 人体リサイクル社会の行き着く果て 山口研一郎
1 人工多能性幹(iPS)細胞の作成による新しい生命科学の幕開け
2 現行の医療・医学の大幅な後退・変質
後期高齢者医療制度の到来/メタボリックシンドロームの出現/現いま在医療はどこへ?
3 現代医療の矛盾を覆い隠す最新医学
臓器移植をめぐって露呈した深刻な問題/臓器移植医療の根源的問題/変容する生命観
医療・福祉の矛盾を覆い隠し、人々の「健康願望」を奮い立たせる先端医学
4 資本と手を組む医学・生命科学
人間の欲望を企業利益に転換/医療や研究活動のために資本にすり寄る医師・医学者たち
5 あるべき医療・医学とは?
病気とは?健康とは?/医療崩壊の最大の原因はコミュニティーの崩壊
新しい「いのち観」の創生へ
第2章 健康幻想(ヘルシズム)と優生思想 八木 晃介
はじめに
1 「義務」としての健康・「義務違反」としての病気
2 社会統制と健康
3 「逸脱の医療化」と禁煙言説
4 医原病としてのメタボリック・シンドローム
5 安楽死・尊厳死の優生思想
6 脳死・臓器移植と優生思想
おわりに
第3章 いのちへの作法 最首 悟
はじめに
1 星子と能力
やる気がない/能力/格納と廃棄/ネオモート
2 いわく不可解
気の持ちよう/解答例1 題名「わからないと言う勇気をもつ」
解答例2 題名「初の臨床実習、一生消えない恐ろしさ」/あり得ない話
3 「やましさ」の受け止め方
生体加工/風土/克服
4 いのちとは一体全体どうなっているか
独立と従属/「いのちはいのち」の内/部分と全体/一体と全体
5 サブのサブなればこそ
男という類/素生活
第4章 生命(いのち)観変貌の社会史 天笠 啓祐
1 バイオテクノロジーの歩みと生命特許
分子生物学誕生の秘密/科学から技術へ/医療分野への応用が進む
生命特許がもたらしたもの/米国、WTO・Trips協定が遺伝子特許をもたらし世界に強制
バイオパイラシー(生物学的海賊行為)
2 ヒトゲノム解析
遺伝子の解読が競争に/血液は情報の宝庫/流失する情報/加熱する競争がもたらす歪み
30万人遺伝子バンク計画とオーダーメイド医療
3 遺伝子診断とDNA鑑定
遺伝子診断始まる/広がる差別/診断技術発達の波紋/遺伝的淘汰の時代
健康ブームとダイエット遺伝子検査/DNA鑑定/マスコミの犯罪
容疑者DNA型データベース運用始まる/DNA型データベースの先にあるもの
4 遺伝子治療の登場
人間の遺伝子操作、人体実験から始まる/最初の遺伝子治療
どの遺伝子を、何を用いて、どこに導入するのか/ベクター系開発がキーに
5 人体改造の時代
人体部品の利用/ES細胞とは/iPS細胞とは?/ドーピングから人体改造へ
遺伝子データバンクへ/優生工学/無力な生命倫理
第5章 いのちの否定──宗教による戦争と差別の正当化── 神戸 修
はじめに
1 宗教といのち
2 仏教といのち
いのちへの問い/「浄土」という観念/「殺すな、殺さしめるな」/近代天皇制とは
3 超越者への畏敬
「戦時教学」/「宗教的情操」/「宗教的情操」のもたらすパーソナリティ
「人間を超えたものに対する畏敬の念」/仏教教団の動向/靖国思想
4 「和の精神」
戦時教学/犠牲の思想と宗教/家族国家論
5 「自然(じねん)」の思想
本覚思想/国家の要請/自然と社会との重層的理解/天皇制教育における地理教育
おわりに
おわりに 山口 研一郎
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