書籍内容
大沼安史[著]
四六判並製/396頁/1800円+税
ISBN978-4-8461-1117-5 C0036
「自国の一般公衆に降りかかる放射能に関連する健康上の危害をこれほどまで率先して受容した国は、残念ながらここ数十年間、世界中どこにもありません。このような基準は、受け入れがたい健康上のリスクを、避けることができるにもかかわらずもたらすものです。私たち医師には、このことを指摘する倫理的責任があります。国際的に最善といえる水準の放射線防護策を実施するには、いっそうの避難が必要です」8月22日、ノーベル平和賞を受賞した「核戦争防止国際医師会議」は菅首相にこう勧告した――。 「東京の平均的市民は4月いっぱい、1日あたり10個のホット・パーティクルを、呼吸を通じて体内に取り込み続けていた!」 政府・東電・マスコミは情報隠しをしていないというが、私たちは瞞されている。そして政治的無策のなか、死の灰の下で確実に〈殺されていく〉。(2011.10)
■内容構成
プロローグ 春に背いて
第1章 核火山
「チェルノブイリの倍」東京・仙台を襲う/過去の全事故の合算を超えた「フクシマ」
児玉龍彦教授の怒りの国会発言/ヒロシマの168・5発分!
今も続く一〇兆ベクレル/時もの巨大放出
第2章「大津波」のトリック
「日本の核の悪夢が始まった」/地震が招いた破局/「メタクラ」がやられた!
「遡上高」を「津波高」にすり替え/AP通信が日本の情報公開法で入手
第3章 「ベント」封印
またもニューヨーク・タイムズ!</1「断念」・2「圧力下がらず」・3「開かず」
ジャパン・タスクフォース報告書
第4章 見えない蛇
「見殺しにしている……」/「クヨクヨしている人に来ます」/「被曝」を教えることもできない
「3号機核爆発」で「プール」の核燃料が上空へ
第5章 黒い雨
「3号機」プールの核燃料が消えた!/最大の懸念は4号機のプール/ホット・パーティクル
純白の雪も汚れていた!
第6章 「メルトスルー」
チャイナ・シンドローム/目くらましショック/IAEAが対日調査で露払い
第7章 「アマノIAEA」
対日批判がウィーンに飛び火/日本代表が外された!/「未来もあやしくなった」
国連からも冷たい視線・
第8章 テストレス
ウィーン帰りのパシリ/脱原発、「ドイツより速いかも」/テストもどき
第9章 対米不信
「不信の6日間」――日米関係、危機に/頼りは「原発」を知らない一握りのアドバイザー
生かされなかった「危機管理システム」/寺田学補佐官の証言/対米サインでもあったヘリ投水
「お国の存亡が……」
第10章 権力発電所
交付金中毒/「女性」も利用した「安全神話」づくり/原爆雲を見た中曽根康弘
「平和の原子」の悪魔と取引/「原子力平和利用博覧会」で対日工作/「原子力立国」の驕り
「原子力帝国」/「日本を太陽国家に」
第11章 ゾンビ
「原子炉に飛び込んで死ね!」/まるで与党総会屋報道/血税を吸い続けるドラキュラ
末期原子炉を十年延命/同じ羽根のムジナ鳥
第12章 SPEEDI
忘れたころに……/NAMIE発AP特報/放射能雲/「予報」通り避難先を直撃
SPEEDI公開を必死に求めていた小佐古氏/「隠したのは首相官邸の事務局」
誰が闇に葬ったか?/届いた・届かない/「提言」全文を入手し日本語版でも報道
第13章 セーフキャスト
アイデアはオレゴンで生まれた/「みんなでつくる放射線量マップ」
「なんと嘆かわしい日本政府の対応」
第14章 メルケリズム
「脱原発」の出口へ駈け出したメルケル/カントの国の「倫理」を問う
定言的判断と相対的な危険評価/エコエティカ道徳の高みへ
第15章 水と炎
NASA長官の警告/ネブラスカの原発が洪水でダブル危機
破局水位まであと2・6メートル/空前の森林火災、原爆誕生の地に迫る
原発よ、驕るなかれ/ノース・アンナ原発、地震で外部電源喪失
第16章 原子力で日向ぼっこ
「核と人類は共存できない」/原発の贈り物/「未来への責任から目をそらしていなかったか」
「キロトンからミリシーベルトへ」/「ヒロシマからフクシマへ」/原子の陽のあたる破局への道
第17章 風下に生きる
全地球汚染/RIUの北半球拡散動画/北米西海岸に放射性硫黄/カナダにレインアウト
4月に日米両国政府が隠蔽のため秘密協定
米軍が「コンスタント・フェニックス」で放射能放出を徹底モニター
始まった「再放出サイクル」/「被曝の風」に立ち向かう時
第18章 ノミとドジョウ
「菅蹴り」の後で/菅直人へのオマージュ/NHKが「ドジョウ救い」?
第19章 言葉と原発
詩の礫/言葉と言葉をつなぐ/「原発、いらない」/ネットに放つ言葉/飯舘村発
運命の三月十五日/原発というバベルの塔/壁に書かれた言葉
「絆」は「糸」と「半」からなっています/人を笑わせる言葉/「私はお墓にひなんします」
エピローグ 核の冬 来りなば
「花の海岸」からの旅立ち/アイリッシュ海のほとり
ドイツ反原発運動のメッカ、ゴアレーベンへ/ポーランドのオルシュチンで起きたこと
ソフィーの選択/「核戦争防止国際医師会議」の避難/拡大勧告
神をも畏れぬヨルダン原発輸出/最後まで強気だった/「アトミック・アンヌ」
スウェーデンから/「緑の風が歌う歌」/ウィーンのカフェ 希望のデッサン
あとがき
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