書籍内容
やぶれっ!住基ネット市民行動[著]
四六判上製/276頁/2000円+税
ISBN978-4-8461-1210-3 C0036
私たちには基礎年金番号、運転免許証番号、住民登録番号、保険証の番号など、多くの番号が付けられています。しかしこれらの番号はそれぞれの業務の目的のために、その対象者に限って付けられ、利用も限定された「限定番号」です。
いま作られようとしている共通番号制度は、住民登録のある(定住外国人を含む)全ての国民に強制的に付番され、様々な「限定番号」をつないで広範な事務に汎用的に使用される「共通番号」であり、まったく違う新しい番号です。プライバシーに深く関わり差別的扱いの原因となるおそれのある「障害」、母子、生活保護・失業、疾病・要介護などのセンシティブ情報や、住基ネットでは提供されない世帯情報も、情報提供ネットワークを通して提供されます。こうした情報が、行政機関や関係する民間機関の間で情報共有されていくことで、漏洩や本人の意思に反した利用が心配されます。
この本では、監視社会や管理強化、プライバシー侵害などの問題からの批判だけでなく、現実に作られようとしている制度やシステムに内在する矛盾や問題点の検討にも力を入れました。(2012.6)
■内容構成
はじめに
1 急速に進む国民総背番号制の導入
2 私たちを一生追跡し丸裸にする番号制度
3 住基ネットの危険性が現実化
4 本書の意図と内容
第一章 民主党政権で番号制度はどのように検討されてきたか
1 はじまりは民主党のマニフェスト
2 平成二二年度税制改正大綱で導入方針
3 社会保障・税に関わる番号制度に関する検討会
1 導入目的も不明な「中間取りまとめ」
2 反対意見を許さない意見募集の実施
4 番号制度に関する実務検討会の設置
5 IT戦略本部における「国民ID」とカードの検討
1 「新たな情報通信技術戦略」
2 「国民IDコードの考え方」
6 政府税制調査会での検討
7 民主党内での検討会
8 「社会保障・税に関わる番号制度についての基本方針」
9 検討組織と番号制度創設推進本部の設置
10 「社会保障・税番号要綱」
11 「社会保障・税番号大綱」
第二章 「大綱」の考える共通番号制度と問題点
1 番号制度を支える三つの仕組み
1 付番
2 情報連携
3 本人確認
2 「番号(マイナンバー)」──新たな背番号の付番
1 「番号」の五つの要件
2 「番号」に何を使うか
3 管理法は「一元管理」か「分散管理」か
4 総務省が一元管理する共通番号制度
5 付番対象は?「全員に」とは誰を指すのか?
6 「番号」をどのように付番するか
3 「番号」を何に利用するか
1 利用事務の検討経過
2 番号法を想定した当面の利用事務
3 「番号」で実現するとされている事務の危険性
4 個人情報を相互利用する「情報連携」
1 情報連携の前提条件
2 「大綱」で書かれている情報連携の仕組み
3 情報連携基盤WGで検討されている仕組み
4 「情報連携基盤WG中間とりまとめ」での再検討
5 事業者に検討を委ねられたシステム設計
5 本人確認──番号カードが必要な生活
1 「本人である証明」を提示しなければ生活できなくなる
2 住基カードを改良した番号カード
3 どのような個人番号カードか
4 公的個人認証サービスの利用拡大
5 事実上、常時必携の「国民登録証」に
6 成りすましや偽造は防げるか──住基カードの例
1 交付開始とともにはじまった不正取得
2 総務省が対策しても不正は拡大
3 携帯電話の不正取得に利用
4 新しい住基カードの発行
5 首都圏で不正取得の大量発生
6 なくならない不正取得
7 マイ・ポータル
1 マイ・ポータルとは何か
2 マイ・ポータルの問題点
8 個人情報保護をどう考えているか
1 「大綱」の認める共通番号制度のもつ危険性と対策の必要
2 共通番号制度の条件となる住基ネット最高裁判決
9 「大綱」の考える個人情報保護対策とは
1 システム上の安全措置
2 制度上の保護措置
10 第三者機関は実効性があるか
1 住基ネットの第三者機関はどうだったか
2 「大綱」の考える第三者機関
3 情報保護評価でプライバシーは守れるか
第三章 なぜ共通番号制度をいまつくろうとしているのか
1 「社会保障・税番号大綱」に書かれている理由
2 民主党政権下で次々と出されてきた目的
3 国民総背番号制への野望
4 住基ネットの失敗から共通番号制へ
1 電子政府推進派に見放された住基ネット
2 住基ネットは行政電子化のボトルネック
3 住民サービスはすべて破綻
第四章 「大綱」後の番号制度導入に向けた動き
1 パブリック・コメントで指摘された問題点
2 民主党内から修正の動き
3 リレーシンポで相次ぐ批判
4 社会保障・税番号制度の法律事項に関する概要(案)
1 名称、所管
2 制度の内容
5 社会保障・税一体改革の大綱を閣議決定
6 世論調査で八割が番号制度を知らず
第五章 国民総背番号三法案が国会提出
1 「国民が主権者」から国民管理に変質した番号制度の目的
2 サービス提供から国民管理に拡大した利用事務
3 番号利用法での個人番号の利用範囲
4 特定個人情報はどう提供されるか
5 差別の原因となるセンシティブなプライバシー情報も情報連携で提供
6 情報連携の仕組みが不明なまま番号法を提出
7 個人情報保護の第三者機関と罰則
8 住基カードから個人番号カードへ
9 住基ネットの利用拡大と国民管理への変質
第六章 共通番号制度の問題点
1 番号制度の目的とは何か
1 番号そのものの導入が目的
2 「国民の権利を守る」ことが目的か?
3 限界付ける考え方も出てはいる
2 所得の把握はできるのか
1 所得の把握はできるのか
2 現在の税制と共通番号制度
3 給付付き税額控除に共通番号は必要か
4 納税者番号としてどこまで機能させるのか
3 社会保障での利用の問題性
1 総合合算制度と社会保障個人会計はコインの裏表
2 狙いは自己責任論の拡大と市場化
3 なぜ「申請主義」から「お知らせ主義」への移行なのか
4 外国におけるなりすましや大量漏洩
1 なりすまし天国=アメリカ
2 韓国では最近四年間で国民一人当たり二回以上住民登録番号が漏洩
3 イギリスは国民ID番号カード制を廃止
5 住基ネットに依存する共通番号制度の問題
1 基本四情報による紐付けは可能か
2 年金事務にみる基本四情報による突合の困難
3 住基ネットからの基本四情報提供の問題
あとがき
本書資料について
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