書籍内容
臺宏士[著]
四六判並製/276頁/2000円+税
ISBN978-4-8461-1701-6 C0036
それにしても安倍政権の支持率は衰え知らずだ。その理由には、安倍政権の巧みなダメージコントロールがある。確かに、2016年5月のオバマ米大統領の広島訪問、12月の米ハワイの真珠湾の訪問などテレビ画面や紙面の先にいる視聴者、読者を意識したメディア・イベントの演出は、歴代首相の中では図抜けている。
そして放送内容への介入やテレビの停波発言など「恫喝」の一方で、新聞界の要望に応えて消費増税時の軽減税率を適用する「懐柔」によって、安倍政権は、マスメディアを支配しようとしている。そうした状況全体を「アベノメディア」と名付けて、タイトルにした。
安倍氏が、小泉政権だった2003年9月に、わずか当選3回で自民党幹事長に抜擢され、政治の主舞台に上がってから2017年で15年目になる。本書は、その間に安倍氏とマスメディアの間で起きたことを中心に、筆者の毎日新聞記者時代からの資料や、執筆した記事を手繰りながら追加取材して、まとめ直したものである。(2017.1)
■目次
第一部 安倍ジャーナリズム
第1章 総務大臣がテレビの停波に言及 自民党が選挙報道に事前要請
電波停止/政府統一見解「政治的公平の解釈について」
NHKに対する厳重注意/「私たちは怒っている」/「アベコレ」発言
消えた街頭インタビュー/メディアは「もはや恐るるに足らず」
第2章 看板番組のキャスター三人が降板
NHK「クローズアップ現代」/「出家詐欺」やらせ報道疑惑
第3章 籾井会長下のNHKは何があったか
政治銘柄のNHK会長人事/籾井会長発言の概要/籾井会長就任の舞台裏
「一種の不祥事だ」/「何が問題なのか」/百田委員の暴言・失言
「沖縄の二つの新聞は潰さないといけない」
第4章 危険地取材規制 パスポートを返納命令
旅券返納を命令/「旅券を返納させたのは妥当」と読売・産経が社説
返納命令を批判できないマスメディア/忖度報道
第5章 慰安婦番組改変問題とは何だったのか
安倍首相とNHK慰安婦番組/番組改変の実態/政治圧力を否定するNHK
忖度/その後のNHK
第6章 第一次安倍政権では何が起きたのか
第一次安倍政権/行政指導/命令放送
電波監理審議会が命令放送を「適当」とする答申
拡大解釈と総務大臣権限の強化/支持者を経営委員長に起用
単独出演を要請
第二部 戦時報道体制
第1章 特定秘密保護法
1 特定秘密保護法シミュレーション 私、捕まるんですか
勤務先が軍事産業へ参入/学生時代に受けた取材
「ブラック国民リスト」を追う/違法性ない人たちを調査
目をつり上げる編集局長/違法行為の告発で懲戒免職
編集局長室の「密談」/シラを切る官房長官
2 特定秘密とは何か
源流は第一次安倍政権
3 特定秘密保護法の概要
二七万件の特定秘密/報道後も非公表/「適性評価」という身元調査
「不当な取材」とは何か/英米の報道機関と秘密
4 国会質疑のポイント
審議入り一カ月でスピード成立/「潜入取材処罰ない」
記者への家宅捜索は?/取材源の秘匿は
5 新聞社説
割れる全国紙/地方紙の大半は批判派
6 施行二年を検証
「特定秘密」の印も秘密/カギ握る公文書管理監/「防衛秘密の検証を」
社説の主な見出し
第2章 集団的自衛権とメディア
「従軍」記者の誕生/進まなかった情報開示/米軍との大きな落差
放送局は「指定公共機関」に/揺らぐ報道の自由
第3章 玉音放送事件の柳澤恭雄さんインタビュー
第三部 相次ぐ規制立法
第1章 改正通信傍受法
当初は四種の犯罪に限定/監視の目、緩かった改正案/将来は会話傍受も?
第2章 ヘイトスピーチ
ヘイトデモ断念/公権力に都合良く運用される恐れも
第3章 共謀罪
一七年の通常国会に提出/労働争議も視野に?
第四部 沖縄報道をめぐって
第1章 本土メディアの沖縄報道
土人、シナ人発言/松井大阪府知事発言/鶴保沖縄担当大臣の発言/沖縄一揆
沖縄独立論/民意を無視する国は民主主義国家とはいえない/統治者視点の報道
翁長雄志氏の名スピーチ
あとがき
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