農と食の戦後史─敗戦からポスト・コロナまで

¥ 1,800 (税別)

書籍内容

大野和興・天笠啓祐[共著]
四六判上製/188頁/1800円+税
ISBN978-4-8461-2018-4 C003

敗戦直後の食糧難時代を経て、高度成長で人が農村から都市へ流れ、環境破壊や健康破壊が顕在化し、農業基本法や減反政策などで農業が衰退してゆく。その後、農業はグローバル化の波にさらされ、遺伝子組み換えやゲノム操作など、食の安全が脅かされるようになる。一方、有機農業や消費者運動が活発になっていく。
本書は、政治、経済、社会をバックに日本の農業と食がどのように変化してきたかを捉え、戦後の食と農を総括している。(2020.9)

■内容構成
第1章 日本農業の戦後出発と食糧増産の時代
戦後の民主化と農民運動
機械化と化学化が始まる
米国の余剰農産物の受け入れ先に
工業優先の時代へ
第2章 基本法農政とコンビナート建設の時代
戦後農業の最大の転換
コメから見た日本農業
第3章 新たな農民運動と有機農業運動の始まり
農民運動も新たな時代へ
ゼネコンを支える労働力
農薬問題と有機農業運動
第4章 総合農政と農業切り捨ての時代
減反政策始まる
品種の多様性が奪われることで起きる問題
食糧問題の世界化と近代畜産の拡大
米価闘争・乳価闘争
農家の持つゆとりとは?
第5章 臨調行革路線とガット・ウルグアイラウンドの時代
食管制度が奪われる
臨調行革路線の登場
主要農作物種子法と種苗法
ガットからWTOへ
遺伝子組み換え作物の登場
農業の主体と植物工場
第6章 グローバル化の中の農と食
グローバル化が奪う食の安全
生産効率主義が限界にまで来た
技術の主体の変化と認証ビジネス
企業犯罪が相次ぐ
第7章 TPPと3月11日の衝撃
原発事故がもたらした提携の分断
農業特区
安保法制と農業
貧困の問題、あるいは格差社会
健康の戦略化
食品表示制度の改悪続く
食品と医薬品の区別があいまいに
ゲノム編集技術の登場
第8章 コロナ・ポストコロナ時代の農と食
新型コロナウイルスによる感染症拡大で何が起きた
ポストコロナと農と食の未来
年 表 戦後の農と食の歴史

納品について

版種類

印刷製本版, 電子書籍版

書評

歴史に目を閉じ、過ちを繰り返す為政者こそ読むべき本だ。

2人のジャーナリストが対話形式で、農と食の戦後史を縦横に語る。政治、経済、社会の変遷と絡め、その全体像に迫った。現場に立脚しながら、構造問題を解析し、ポストコロナウィルス時代の視座を提示する。
食糧増産、基本法農政、総合農政、グルーバル化、新型コロナ禍による変化を読み解く。眼前に広がるのは農業の衰退、食の安全の後退という荒涼たる世界である。通底するのは、自由化と効率至上主義。それを招いたのは米国の「核の傘と食糧の傘」に守られた日本の戦後体制そのものだと喝破する。
コロナなどの感染症拡大は、グルーバル化の所産だとし、改めて生産者と消費者の結び付きを強め、小さな試みを地方から起こすよう呼び掛ける。歴史に学び、未来を展望するための一冊である。歴史に目を閉じ、過ちを繰り返す為政者こそ読むべき本だ。

◉『日本農業新聞』2020年11月29日号

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