汚染水海洋放出の争点─トリチウムの危険性

¥ 2,700 (税別)

書籍内容

渡辺悦司・遠藤順子・山田耕作[共著]
A5判上製/236頁/2700円+税
ISBN978-4-8461-2120-4 C0036

2021年4月、政府は福島原発事故による汚染水を海洋に放出することを決定した。公聴会の圧倒的反対、地元漁業関係者や住民、国内ばかりか近隣諸国の反対の声を無視した決定であった。その根拠となった政府「多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会」の海洋放出案は、さまざまな放射性物質を含む汚染水による海洋汚染、トリチウムの危険性、敷地やタンクの増設や他の処理方法を検討しなかったり、無視した杜撰なものであった。
本書は、トリチウムの危険性と汚染水放出の問題点について、一般読者向けの概括的でやさしく分かりやすい解説書であると同時に、国の放出案を逐条的に批判し、汚染水の海洋放出に反対する人びとの手引き書でもある。

■内容構成
はじめに
福島第一原発事故の汚染水を海洋に放出してはならない
第1章 放射線科学から見たトリチウムの危険性
─危険度を事実上「ゼロ」とする政府・専門家の虚偽
はじめに──政府・専門家の主張の中に見えるもの
1 政府閣僚会議の決定文書
2 政府・専門家のその他の「うそ」
3 トリチウムの「危険」という言葉の抹殺に協力する専門家たち
第1節 トリチウムとは何か? その生成と環境中での存在量
1 トリチウムとは何か?
2 トリチウムの発生源
3 環境中の生成量と現存量(インベントリー)
4 トリチウム生成量・存在量のまとめ
第2節 放射性物質としてのトリチウムの「特別の」危険性
1 放射性物質としてのトリチウムの特殊性が規定する特別の危険性
2 トリチウムの環境中での存在形態
第3節 トリチウムβ線への被曝のメカニズムと主要な標的
1 トリチウムの体内での生物学的半減期
2 トリチウムβ線の主要な標的
3 トリチウムβ線への被曝リスク
第3節 付論 日本政府・政府側専門家による虚偽主張について
1 UNSCEAR2001年報告の不誠実な引用
2 胎児影響の存在は実証されている
3 被曝2世調査でヒトの遺伝的影響全体は否定できない
4 ICRPもUNSCEARも人間の遺伝性影響の存在を認めている
5 UNSCEAR による過小評価とECRR による補正の試み
6 最新の『放射線医科学の事典』における継世代影響の評価
第4節 トリチウムの危険性の量的側面、人為的過小評価
1 UNSCEAR によるトリチウム放出の集団線量リスク係数
2 ICRP によるトリチウムの被曝線量評価の多重の体系
3 トリチウム水の生物学的危険度:2~3倍
4 有機トリチウムの生物学的危険度:10~60倍
5 ECRR によるトリチウムの危険度評価計算:50~600倍
6 トリチウムのリスク過小評価の「核心」──線量係数(Sv/Bq)の極度の過小設定
7 6万Bq/L のトリチウム水を日常的に飲用すれば何が起こると予測されるか?
8 麻生副首相の「処理水は飲める」発言をめぐる国際的「騒動」──麻生副首相が結局「飲まなかった」事実は「処理水の健康影響の危険性」を示している
第5節 ICRP「線量係数」の秘密──線量係数操作のからくり
1 もしトリチウムがセシウム137 であったら?
2 政府小委員会資料に引用されたマウスのトリチウム半数致死量
3 もう一つの例──日本放射線影響学会編「トリチウムによる健康影響」
4 腹腔内投与による動物実験──トリチウムβ 線の特殊性を無視、リスクの法外な過小評価に導く
5 無視された日本における過去のトリチウム研究の成果
6 トリチウムの線量評価はどのように決められたか──インサイダー(当事者)の証言
7 各係数の過小評価が重なり合って恐るべき規模に巨大化
第6節(付論) 放射性炭素14の危険性
第2章 トリチウム問題の核心~その人体への影響
はじめに
1 再処理工場から放出されたトリチウムと青森県のがん死亡率
2 福島原発からはどのくらいのトリチウムが放出されたか
3 全国の原発から放出されているトリチウム
4 玄海原発周辺での白血病死亡率増加の報告
5 海外の再処理施設や原発周辺で報告されている健康被害
6 トリチウムの危険性
おわりに
第3章 トリチウムの危険性は歴史的に隠蔽されてきた
1 アメリカの核のモルモット
2 核実験で被曝した家畜の白斑(アメリカ・ニューメキシコ州とネバダ州)
3 水爆開発競争と水爆実験
4 カール・モーガンのICRP内での抵抗
5 さて、これらの事実は、いったい何を意味するのであろうか
第4章 処理水小委員会報告および東電報告批判
第1節「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告」批判
多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書
第2節 東電報告批判
「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書を受けた当社の検討素案について」
第5章 環境放射能汚染とウィルス変異の加速化、パンデミック反復の危険性
第1節 「脱炭素」ブームに乗って原発推進へ回帰する支配層
第2節 コロナパンデミックにおける真の問題
第3節 環境放射能汚染によるウィルス・細菌変異の危険性の指摘
第4節 環境汚染影響によるウィルスの標的となる諸器官の機能障害と免疫力の低下
第5節 新型コロナウィルス生成と疑われる中国の放射能汚染
第6節 環境破壊・気候変動・温暖化の危険、社会経済的諸要因等
第7節 必然的な帰結
まとめ
あとがき

納品について

版種類

印刷製本版, 電子書籍版

著者紹介

著者紹介
渡辺悦司(わたなべ えつじ)
1950年香川県高松市生まれ。大阪市立大学経済学部大学院博士課程単位取得。マルクスの恐慌・危機理論と第二次大戦後の資本主義の経済循環、太平洋戦争下日本の戦時経済動員などを研究。民間企業勤務の後、早期定年退職。語学学校にて翻訳および技術翻訳講師。
共著『原発問題の争点』(2012年)、『放射線被曝の争点』(2016年)『東京五輪がもたらす危険』(2019年)いずれも緑風出版を分担執筆。
遠藤順子(えんどう じゅんこ) 1959年北海道釧路市に生まれる。室蘭工業大学工業化学科卒。1992年弘前大学医学部卒。内科医。日本核医学会PET核医学認定医、日本医師会認定産業医。現在、津軽保健生活協同組合・健生病院非常勤医師。市民団体「六ヶ所村の新しい風」共同代表。
共著『環境・地域・エネルギーと原子力開発~青森県の未来を考える~』(弘前大学出版会)の第3章「内部被曝について─放射線科学の歴史から紐解く─」『放射線被曝の争点』緑風出版(2016年)を分担執筆。
山田耕作(やまだ こうさく) 1942年兵庫県小野市に生まれる。大阪大学大学院理学研究科博士課程中退。東京大学物性研究所、静岡大学工業短期大学部、京都大学基礎物理学研究所、京都大学大学院理学研究科に勤め、2006年定年退職。京都大学名誉教授。理学博士。専門は理論物理学。『電子相関』『凝縮系における場の理論』(いずれも岩波書店)などを著し、磁性や超伝導に関する理論を専門分野とした。市民と科学者の内部被曝問題研究会会員。
原発・環境問題の著書としては以下の共著がある。『環境危機はつくり話か』(2008年、緑風出版)、『原発問題の争点』(2012年、緑風出版)、『福島への帰還を進める日本政府の4つの誤り』(2014年、旬報社)『放射線被曝の争点』(2016年、緑風出版)などを分担執筆。

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