このまま導入を進めていいのか?!

◉『消費者レポート』2020年8月20日号より抜粋

 5G(ファイブジー)とは何のことでしょうか。携帯電話など通信システムの第5世代のことです。
 通信技術は、約 10 年ごとに更新されてきており、最近 30 年間で最大通信速度は、何と 10万倍にもなったと言われています。現在は4Gの段階ですが、今年の3月からは日本でも、この5Gの運用が開始されたのです。
 5Gは大容量のデータを最高速で送受信でき、次世代携帯電話、自動車の自動運転、遠隔医療などに応用できると、いいことずくめで宣伝されています。新たな利益追求を狙う関連産業は実用化に大わらわです。しかし、使用電波の特性(高周波、高エネルギー)ゆえに、今までにも増して、健康障害など電磁波被害が飛躍的に増加することが予測されます。この点についてマスコミなどは、一切触れていません。
 この本の著者は、自らが化学物質・電磁波による障害を体験された方です。環境病をテーマに、海外の研究成果や被害実態についても詳しく研究を重ねてこられました。今回、5Gによる「電磁波汚染と健康被害」について、豊富な事例を根拠として具体的に問題提起しています。
 人工的な電磁波、特に携帯などのマイクロ波(波長が非常に短い)が、ごく微量でも人間の細胞内外のイオン濃度を狂わせ、多様な神経系と内分泌系を撹乱するメカニズムが丁寧に解説されています。5Gの電波は短い波長なので、電波の到達領域が狭いために中継局の大量増設が避けられず、電磁波曝露の危険が一層拡大します。
 目下、日本とアメリカの規制基準が一番緩いという憂慮すべき事態です。それでも米国のいくつかの州は厳しい基準作成に乗り出しています。欧州では5G推進は、はるかに慎重で彼我の差を感じさせます。

【池上明・日消連監査委員】