原発危険性 半世紀訴え訴訟や反対貫く苦悩つづる

◉『京都新聞』2020年9月7日付より

 (…) 遺著「科学者の社会的責任を問う」は、がん告知された3年前から執筆を始めた。荻野さんは同著で、70 年前後の大学が原発推進一色で、初期の反原発運動に対し科学者たちが冷淡だったことをつづる。荻野さんは活断層説に立って証言する地震学者を探し回ったが、地震学者たちは官庁や大企業の協力で地質調査していることを理由に「私の学者生命を断つ気ですか」などと断り、やむなく荻野さんが活断層説を調査研究して法廷で証言した。
 電力会社が「企業秘密」だと核燃料棒データを公開しなかったこと、微量放射能の危険性や炉心溶融リスクを指摘しても国側証人の科学者たちが否定したことなど、福島第1原発事故前の原発訴訟の経過と科学者の姿勢を振り返っている。荻野さんは「原発推進のための教室の関係者として苦しい選択であった」と書き、組織の中で一人反対の声を貫く苦しさも垣間見える。(…)


   【岡本晃明】