科学者の社会的責任を問う

¥ 2,500 (税別)

書籍内容

荻野晃也[著]
四六判上製/272頁/2500円+税
ISBN978-4-8461-2014-6 C0036

京大工学部原子核工学教室の職員(助手)だった私は、学生・院生たちと原発の安全性や問題点を学ぶうちに、その「危険性」を確信したのです──湯川秀樹を代表とする原子力研究のメッカで、反旗を翻して反原発運動の黎明期に活動し、「全国原子力科学技術者連合」(全原連)の組織化に邁進し、「伊方原発訴訟」の弁護補佐人として安全性論争を担った著者の闘いの軌跡……。
核兵器の反対を訴える一方で、原発は原子力の平和利用だ、とする世論が作り出されていった事への不信感を出発点に、科学者らの社会的責任を改めて問い、その社会的使命を考える。(2020.8)

■内容構成
第1章 科学者の社会的責任と反原発
はじめに
第1節 京大における原子核研究
第2節 京大での私の研究について
第3節 京大の原子核・原子力研究について
第4節 湯川秀樹先生のこと
第5節 湯川秀樹と原発問題
第2章 京大工学部原子核工学教室に就職して
はじめに
第1節 「全国原子力科学技術者連合(全原連)」の誕生
第2節 全原連の活動について
第3節 反原発住民運動とのかかわり
第4節 全原連とその他の反(脱)原発運動との関係
第3章 伊方原発訴訟のこと
第1節 裁判の開始まで
第2節 「異議申し立て」の提出
第3節 「第一審」が始まる
第4節 第一審の経過と証人調べ
第5節 第二審(控訴審)始まる
第6節 控訴審での証言内容と経過
第7節 最高裁に上告
第8節 伊方原発訴訟が終わってから
第4章 原発問題から電磁波問題へ
第5章 おわりに
年 表 京大定年退官までの45年間の出来事──反原発から電磁波問題まで

納品について

版種類

印刷製本版, 電子書籍版

書評

原発危険性 半世紀訴え訴訟や反対貫く苦悩つづる

(…) 遺著「科学者の社会的責任を問う」は、がん告知された3年前から執筆を始めた。荻野さんは同著で、70 年前後の大学が原発推進一色で、初期の反原発運動に対し科学者たちが冷淡だったことをつづる。荻野さんは活断層説に立って証言する地震学者を探し回ったが、地震学者たちは官庁や大企業の協力で地質調査していることを理由に「私の学者生命を断つ気ですか」などと断り、やむなく荻野さんが活断層説を調査研究して法廷で証言した。
電力会社が「企業秘密」だと核燃料棒データを公開しなかったこと、微量放射能の危険性や炉心溶融リスクを指摘しても国側証人の科学者たちが否定したことなど、福島第1原発事故前の原発訴訟の経過と科学者の姿勢を振り返っている。荻野さんは「原発推進のための教室の関係者として苦しい選択であった」と書き、組織の中で一人反対の声を貫く苦しさも垣間見える。(…)

【岡本晃明】
◉『京都新聞』2020年9月7日付より。

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