省エネ・高気密住宅が悪化を促進

◉『消費者レポート』2020年12月20日付より

 ある日、著者の足立和郎さんが日消連事務所を訪ねて来られました。香害をなくす活動の担当者に伝えたいことがあるというのです。空気汚染である香害は、柔軟剤や消臭剤などがそもそもの原因ですが、昨今普及した省エネ・高気密住宅が悪化を促進しているということでした。
 建物の換気がされにくい環境が体調不良につながる。その話は目から鱗でした。私や家族は、鼻炎やじんましんなどアレルギー症状に悩まされています。一時的に症状を抑える薬に頼るのではなく、根本的な治療はないものかと考えていましたが、建物には思い至りませんでした。
 この本では、建築家である足立さん本人が化学物質過敏症(CS)を患い、苦悩しながら安全な住まい造りを模索してきた経験が語られています。、また同じく苦しむ人の建築・リフォームの相談に乗る中で得た、対処法の数々が披露されています。
 考えさせられたのは、天然住宅や再生紙というエコなイメージの言葉とは裏腹に、それらを取り入れてCSを発症させたケースです。一般に木の香りは良いものと思われていますが、せっかくの「木造りの家」で天然化学物質のTVOC(総揮発性有機化合物)により、体調を悪化させるケースがあるそうです。また再生紙を使った壁紙や断熱材は要注意だそうです…バージンパルプに比べて多くの薬剤を使って製品化するため、それらが空気中に揮発してくる可能性があるからです。
 足立さんはこの頃、就学前の乳幼児のCSの相談が増えていることを最も気にしています。母親の妊娠中に体内曝露が起きているのではないか、と。新婚で住まいを選ぶ人にも参考にして欲しい1冊です。


【杉浦陽子・本誌編集長】