歴史に目を閉じ、過ちを繰り返す為政者こそ読むべき本だ。

◉『日本農業新聞』2020年11月29日号

 2人のジャーナリストが対話形式で、農と食の戦後史を縦横に語る。政治、経済、社会の変遷と絡め、その全体像に迫った。現場に立脚しながら、構造問題を解析し、ポストコロナウィルス時代の視座を提示する。
 食糧増産、基本法農政、総合農政、グルーバル化、新型コロナ禍による変化を読み解く。眼前に広がるのは農業の衰退、食の安全の後退という荒涼たる世界である。通底するのは、自由化と効率至上主義。それを招いたのは米国の「核の傘と食糧の傘」に守られた日本の戦後体制そのものだと喝破する。
 コロナなどの感染症拡大は、グルーバル化の所産だとし、改めて生産者と消費者の結び付きを強め、小さな試みを地方から起こすよう呼び掛ける。歴史に学び、未来を展望するための一冊である。歴史に目を閉じ、過ちを繰り返す為政者こそ読むべき本だ。