障害ある身体から社会を問う

◉『日本経済新聞』2005年2月3日付

 衝撃的で、深く心に染み込む本だ。結合双生児やインターセックス、巨人症など多様な身体を持つ人々のエピソードを紹介しながら、障害とは、身体とは何なのかと鋭く問いかける力作である。
 結合双生児は一人と数えるのか二人なのか。なぜ彼らを分離することが医学的に正しいことだとされ、分離されれば「ついに自由に」といわれ、手術が失敗すれば「彼らは勇敢だった」と美談になるのか。ほとんどの結合双生児は分離を望んでいない。なぜ個人の身体でなく社会の心を変えないのか、というのが医学史家である著者の主張であり読了後は社会の見方が変わるだろう。