「夢の新技術」の恐るべき実態

◉『週刊金曜日』2004年 8 月27日より

 本書はなぜ同市(御殿場市)がプラントの維持管理にてこずったあげく、運転のパートナーである焼却炉メーカーを提訴するという事態に立ち至ったかを克明に綴ったドキュメントである。
 自らも御殿場生まれの著者はまる 10 年にわたる現場への密着取材を通し、いかに RDF が開発されるべきでなかった技術かを立証する。三重の惨事はRDFに生ごみを入れるという技術上の無理によってもたらされた。「御殿場の事故事例を国が早い段階で感知し、危機意識を持つに至れば三重の死亡事故は回避できたのではないか」(183ページ)という指摘は痛烈だ。
 本書のもうひとつの読みどころは生石灰が有機物と反応する際の危険や、RDF 製造工程のメカニズムを明解に解き明かしている部分である。その分析力は中央紙の科学部記者も顔負けだ。その上、明治学院大学の仏文科出身という経歴もあってか、一度読み出したら途中でやめられない推理小説の面白さがある。欲をいえば御殿場市における住民運動の記述が抜けているところか。

 (評者:津川敬、ジャーナリスト)