書籍内容
木野 茂・山中由紀[著]
四六判上製/380頁/3200円+税
ISBN978-4-8461-2416-8 C0036
水俣病患者は病だけでなく、責任企業や行政に振り回され続け、差別され、分断され、まさに苦界の道であった。関西に移住していた患者たちがチッソ・熊本県・国の責任と賠償を求めて1982年に提訴したチッソ水俣病関西訴訟は2004年の最高裁で行政責任を認めさせ、多くの未認定患者救済の道を切り開いた。
しかし、1959年末までに移住した8人には国・県の責任を認めず、厳しい国の認定基準も否定しなかった。最高裁判決後にやっと県から認定された患者は6人に過ぎず、さらにチッソは裁判で決着済みと1973年に締結した補償協定の実行も拒否した。
最高裁判決後も国・県・チッソの責任を問い続けた患者たちの受難の道を辿る聞き書きの続編。(2025.1)
■内容構成
まえがき ――「続・水俣まんだら」に込めた意味
第一章 高裁判決の陰で泣いた患者たち
「お父さんも怒ってると思うわ」/未認定患者の国賠訴訟が関西訴訟だけになるとは……/高裁判決は行政責任を認めたが、返す刀で患者を泣かせた/一審も二審も患者の認定と賠償に大きな疑問を残した/関西訴訟の一審原告団長だった岩本夏義さんとは……/文字通り関西訴訟に命を懸けた夏義さん
第二章 岩本夏義さんの長女・恵さんと坂本美代子さん
夏義さんの長女・恵さん、家族とともに大阪へ/水俣のことを隠して結婚したが、父の死後は後を継ぐ決意に/五人の認定患者を出した水俣の実家から大阪に出てきた美代子さん/美代子さん「忘れることのできない差別」/恵さんと美代子さんとの出会い
第三章 上告審中に患者会分裂、美代子さん・恵さんら自主行動へ
国・県は責任を認めず上告、弁護団と支える会は上告取下げ署名へ/勝訴原告と敗訴原告の助け合いが二審判決後に紛糾、患者の会分裂へ/患者の意思で動きたいと「友の会」結成、しかし三カ月で川上さんが……/突然起こった県からの「検診拒否者」扱いで、「友の会」が公式に登場/「友の会」に送られてきた奇妙なファックス事件/最高裁で弁論再開、美代子さんも意見陳述
第四章 行政認定求めて熊本県・環境省へ
水俣病関西訴訟の最高裁判決とは……/最高裁判決に怒ったのは美代子さんと恵さんだけだった/環境省部長の謝罪訪問で行政認定を求める/認定を求める美代子さん、両親の失効に気付いた恵さん/美代子さんの認定と夏義夫婦の失効取消を求めて、環境省へ
第五章 行政認定出ても、チッソは補償協定を拒否
/恵さんの説得で県の検診に応じた美代子さん/美代子さんと恵さん、熊本県庁で座り込み 知事に早期認定を要請/川上さん夫婦とFさんが認定義務付け訴訟を起こす/驚きのニュース・・・「チッソ勝訴後認定患者に補償拒否」/Ⅰさんの記事から一カ月後にやっと美代子さんに県から認定の電話/チッソの補償協定拒否に熊本県・国はどうする?/最終的に行政認定を得た関西訴訟の勝訴原告は六人
第六章 補償金訴訟を起こした人は敗訴
行政認定を得た美代子さん 早速チッソと環境省へ/美代子さん宅へ来たチッソ部長に四者会談を提案したが ……/補償金訴訟の一審判決はチッソの言うがまま/県はチッソの補償協定拒否後に、なぜ認定したのか?/補償金訴訟の判決を盾に居直るチッソと交渉/美代子さんの怒りの語りにも動じず、一歩も引かぬチッソ
第七章 勝訴後認定者には協定補償なし
県はチッソの補償協定拒否をなぜ教えてくれなかった? /補償金訴訟は二審も敗訴したが、美代子さんは認定責任を求めて県へ/美代子さん、県も駄目なら環境省と言い出すが、体調不良で動けず/美代子さん、最後の直談判となった環境省交渉へ/情報公開資料では美代子さんは二〇〇〇年に認定されていたはず?/勝訴後の認定患者は誰一人、補償協定による補償をもらえなかった
終 章 美代子さん 無念の逝去 語り継ぐ恵さん
美代子さんは自分の思いを語る場が欲しかった/美代子さんの突然の逝去 「もう私しかいない」と恵さん/恵さん「関西訴訟のことは私が語り継ぐ」
資料編 『続・水俣まんだら──チッソ水俣病関西訴訟の患者たち』
水俣病関西訴訟・最高裁判決(二〇〇四年一〇月一五日)/「水俣病関西訴訟の患者たち」関連年表/「新・水俣まんだら︱チッソ水俣病関西訴訟の患者たち」目次/参考文献
あとがき
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