書籍内容
シーラ・ジェフリーズ著
井上太一[訳]
四六判上製/520頁/4200円+税
ISBN978-4-8461-2503-5 C0036
本書は「セックスワーク」の擁護言説を批判的に検証し、性売買を女性に対する男性の暴力かつ人権侵害と捉え直すラディカル・フェミニズムの古典である。金銭と引き換えに他者の性的利用権を買うという行為は、男性が経済的優位に任せて女性を搾取する形態を主とするため、従来、フェミニズムにおいて批判の対象とされてきたが、近年では買われる人々の「主体性」を再評価するという名目のもと、性売買を一人前の労働である「セックスワーク」とみて擁護する言説─セックスワーク論─が、アカデミックなジェンダー論やその影響を受けた社会正義論の主流となりつつある。
本書はそのような風潮にいち早く異を唱え、フェミニズムがこれまでに積み重ねてきた膨大な成果に照らして、性売買の本質はやはり暴力にほかならないことを再確認する。原著は1997年に刊行されたのち、2008年に緒言を加えた新版へと改訂された。この主題について考えるうえでの必読書である。(2025.3)
■内容構成
凡例
訳語解説
略称一覧
二〇〇八年版緒言
産業の成長
性売買の合法化
供給ライン─性売買向け女性人身取引
謝辞
序論
第1章 女性人身取引、フェミニズム、国際連盟
白人奴隷取引は存在したか
一九一四年までの人身取引と国際法
国際連盟における人身取引
女性人身取引とは何だったのか
フェミニズムの分析
性売買の防止
女性非難
平等な道徳基準の追求─戦術的限界
第2章 買虐者たちの叛乱─性売買と性革命
性科学
性売買のセクシュアリティを構築する
性売買の歴史
ビクトリア朝の性売買を再評価する
性売買の社会学
性売買と性の自由
第3章 性売買を普通化する─性売買当事者の権利運動
性売買当事者の権利運動の誕生
国際的組織編制
クイアの視点
フェミニストたちの論争
フェミニズムへの敵意
性売買パフォーマンス・アート─性産業の広報活動
第4章 同性愛と性売買
性的マイノリティ
男性の性売買と女性の性売買の違い
トランスセクシュアルの性売買
ゲイ男性のポルノグラフィ擁護
レズビアンの政治学における性売買
第5章 「選択」としての性売買
リベラルの理論における選択の概念
性売買への同意という選択
被害者非難
性と生殖のリベラリズムと選択
選択と女性の主体性─ポストモダンのアプローチ
被害者主義
選択の制約
女性を信じるということ
選択を超えて─抑圧を理解する
第6章 ほかと同じただの仕事?──「労働」としての性売買
性売買はどのような労働か
労働の尊厳?
平等な契約としての性売買
性売買と奴隷制に共通する特徴とは?
性売買は男性至上主義の構築物
苛烈な身体経験
性売買を労働と認めるとどうなるか
性売買はほかと同じただの仕事ではない
第7章 「なぜ車が? 誰が運転を?」──性売買とセクシュアリティの理論化
本質主義
社会構築
無意味さの性の政治学─シンボリック相互作用論とポスト構造主義
ラディカル・フェミニズム
機会平等フェミニズム
第8章 「セックス」としての性売買
性売買と男性のセクシュアリティ
女性からみた「セックス」としての性売買
スティグマ
性交
ポルノグラフィと性売買
性売買とセクシュアリティの構築
第9章 男の性暴力としての性売買
定義
名付けの力
性売買における不払い暴力
小児性虐待と性売買の結び付き
性売買は商業的な性暴力
性売買における性暴力の種類
性的ハラスメント
性売買と性暴力の作用
解離
第10章 性暴力、フェミニズムの人権理論、性売買の除外
権利への疑念
国際的人権の概念に対するフェミニズムからの批判
人権と女性に対する侵害
なぜ性売買は除外されてきたのか
軍事性奴隷制
前途
第11章 人身取引、性売買、人権
今日の女性人身取引
一九四九年条約
人身取引に関する性売買肯定派の立場
性売買と国際人権コミュニティ
人身取引に関する反性売買の立場
性搾取禁止条約
加害者を処罰する
結論 性売買を一般化する
緒言参考文献
参考文献
邦訳一覧
訳者解題
廃絶主義とセックスワーク論
ジェフリーズとトランスジェンダー
訳語について
レビュー
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