書籍内容
藤原邦達 [著]
四六判並製/324頁/2000円+税
ISBN4-8461-0201-7 C0058
残念なことに、次つぎに規模の大きい食品被害事件や食品不正事件が発生して、食品の安全性や品質表示についての疑問や不安が近年になく高まっている。雪印乳業食中毒事件や雪印食品牛肉偽装事件は、わが国のトップレベルの企業が、消費者の安全を考えない杜撰極まりない品質管理と、税金を詐取し消費者を欺瞞する違法行為を行なっていたことを白日の下に明らかにした。消費者は怒りを越えて、唖然とさせられ、信頼を失った雪印食品は、遂に一月足らずのにうちに会社整理に追い込まれた。 確かに、これらの事件は、その企業責任が厳しく問われなければならない。しかし同時に、牛肉不安を誘発した狂牛病の対策を放置してきた食品衛生行政、農林行政そのものの在り方も、改めて厳しく問いただされなければならない。
本書では、食品衛生学の第一人者の著者が、雪印乳業食中毒事件や雪印食品牛肉偽装事件をあらゆる角度から分析して、雪印グループの責任と食品の安全に関わる行政の現状と問題点を徹底的に洗い出し、原因と責任の所在を明らかにして、改革の方向を提言する。(2002.3)
■目次
まえがき
1 雪印乳業低脂肪乳食中毒事件をどう見るか
2 雪印食品牛肉偽装事件をどう見るか
第1部 雪印低脂肪乳食中毒事件の総括
第1章 事件の経緯と原因の追及
1 事件の経緯
2 発症者の実態
3 潜在被害者の存在について
4 細菌と毒素検査の結果の概要
5 施設の調査結果の概要
6 大阪工場への容疑の追及
7 原因の追及に関する問題点
8 大樹工場への容疑の追及
9 会社側の推定する毒素産生のメカニズム
10 エンテロトキシン混入脱脂粉乳の流れ
11 事実関係をさらに明らかにしたい事項
12 合同専門家会議報告書の結論
第2章 雪印乳業はどう対応したか
1 歴史的な事故体験の風化
2 会社側の事故報告の概要
3 過失、怠慢、問題とされる事項の要約
4 雪印乳業の反省
5 雪印乳業の事件後の対応と再発防止策の公表
第3章 食品衛生行政はどう対応したか
1 保健所での食品衛生行政の位置付け
2 食中毒事故調査の権限とその法的な根拠
3 事故の予防と広報の問題点
4 事故処理と検査活動の問題点
5 大阪工場の衛生管理状況の調査結果
6 大阪工場に対する保健所の日常的な指導と監視の状況
7 大阪市での食品衛生行政の仕組みの変更
8 保健所を守る市民の会の声明
第4章 法的責任を追及する
1 大阪府警による刑事告発
2 法的責任の所在と予見可能性について
3 民事訴訟の提起
4 国と自治体の責任も免除されてはならない
第5章 食品被害情報の交流と開示を再点検する
1 食品被害情報の経路は
2 危機管理での情報開示のありかたは
3 大阪市は公表指針を改定した
第6章 食品関連企業の役割を再点検する
1 食品衛生管理の状況を再点検する
2 各企業はどう取り組んでいるのか
3 食品衛生管理者と食品衛生責任者を重視しているか
4 企業と業界の自主努力が必要である
第7章 食品衛生指導、監視の役割を再点検する
1 食品衛生監視の役割を重視する
2 食品衛生監視の現状には問題が多い
3 どのように食品衛生監視能力を増強するのか
4 新しい課題への対応が求められている
5 国際的な潮流に乗り遅れないために
第2部 雪印食品牛肉表示偽装事件を総括する
第1章 事件の経過 第2章 偽装工作の構図とそのダメージ
1 偽装工作の構図
2 雪印食品、雪印乳業と関係業界へのダメージ
第3章 問題点の把握と不祥事の再発防止のために
1 行政側の対応には問題がなかったか
2 狂牛病対策での行政側の責任を自覚せよ
3 汚染源、感染ルートの解明こそ牛肉不安を取り除く
4 原産地表示偽装事件を深刻に受け止める
5 不祥事の再発をどう防ぐか
第3部 国産酪農、畜産業の信頼性を高めよう
第1章 酪農、畜産技術の問題点と自給率の向上
1 酪農、畜産業技術の進歩の実態
2 自給率をどう確保するのか
第2章 酪農、畜産業をどのように発展させるか
あとがき・食品の安全と品質を守るために
参考文献一覧
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