書籍内容
上岡直見[著]
四六判上製/260頁/2400円+税
ISBN4-8461-0409-5 C0036
道路公団民営化の問題で道路政策への社会的関心が高まっている。しかし、せっかくの議論が、高速道路の経営形態と採算性、官僚悪者論や市場原理の偏重といった方向に矮小化されつつある。 今日の道路政策は、クルマと鉄道などの総合的関係、地球温暖化対策との関係などを踏まえ、日本の交通 体系をどうするのか、私たちの暮らしに交通がどのようにかかわるのか、という観点から議論される必要がある。
本書は、市民のために道路交通の基礎知識を解説するとともに、「脱道路」を考える入門書!(2004.7)
■目次
はしがき
第一章 道路交通の基礎知識
道路交通の基礎知識
道路交通を考える視点/道路の基本/どこにどんな自動車が通行しているか
なぜ交通量が増えるのか
道路は自動車に追いつかない/モータリゼーション――悪の枢軸
「駐車場」が路上駐車を増やす/将来の交通量は減るのか/市町村合併と交通
税・財源・制度をめぐる議論
道路とお金の流れ/自動車関係の税金は高いか/海外との比較
道路整備の目的を見直す
東名高速道路の横顔/ボトルネック対策/都市環状道路の意味
第二東名と外環道・圏央道/日本中が渋滞なのか/多様な検討の必要性
地域にメリットはあるか/通り抜け交通は別の対策で
人々は何を必要としているか
道路が欲しいのではない/道路が失業者を作る
民営化委員会の評価
民営化委員会の限界と成果
第二章 市民と交通需要予測
交通計画への市民参画
市民と交通需要予測/情報のコミュニケーション
需要予測の前に
「計画」と「決定」の分離/需要推計がすべてではない/交通実態の調査
交通需要推計のしくみ
交通需要推計とは何か/四段階推計法/段階ごとの推定
第一段階・発生と集中/第二段階・分布交通量/第三段階・手段分担率
第四段階・経路配分
結果をどうみるか
推計結果の解釈/裁かれた交通需要推計/圏央道あきる野裁判と道路問題
圏央道あきる野裁判と道路問題/市民と専門家
最大の難物─物流
市民がトラックを走らせる/大型トラックは邪魔ものか
第三章 評価の指標
「要・不要」とは何か
高速道路の新直轄方式/社会的費用・便益を考える意義/注目する要素
社会的割引率/ドイツのRAS─Wについて/日本での評価項目
具体的な便益と費用の算出
走行時間の節約(①─(ⅰ)の項目)/走行費用の節約(①─(ⅱ)の項目)
交通事故減少の価値(②の項目)/大気汚染の考え方(③─(ⅰ)の項目)
騒音(③─(ⅱ)の項目)/地球温暖化の世界的被害(③─(ⅲ)の項目)
事例から考える
都市高速道路の外部費用/「バイパス」だけが選択肢か
自動車の社会的費用
社会的費用の考え方/社会的費用の具体額/社会的費用を計測する意義
費用・便益分析の応用問題
地方鉄道存続と費用・便益分析/「えちぜん鉄道」復活の事例
バス転換は「公共交通全廃」を招く/クルマ社会だからこそ必要な地方鉄道
全国の地方鉄道の費用・便益分析/都電は渋滞を救う/自転車交通の社会的便益
第四章 道路交通と地球温暖化
温暖化問題と交通
完全に破綻した温暖化対策/対策メニューの評価/道路建設は温暖化対策になるか?
道路整備効果の実績も不明/どのくらいの対策が必要か/幻想にすぎない燃料電池
普及を妨げる壁
温暖化と自動車交通
カタログ燃費と実態燃費/実態燃費を左右する要因/道路工事が発生するCO2
道路整備がもたらす別の側面
遠い食卓──フードマイルズ/夕食メニューとCO2/鉄道駅が温暖化を防止する
第五章 「脱道路」が日本を救う
経済・社会シミュレーション
豊かなうちに方向転換しよう/市民エネルギー調査会/シミュレーションの前提
日本の交通政策と道路特定財源
戦後交通政策の出発点/ワトキンス・トラウマ/道路特定財源の説明をめぐって
転換のシナリオ
シナリオの基本/道路特定財源の転用
総合交通政策の枠組み
政策の五要素と市民のニーズ/交通基本法の展開/LRTの推進
高速道路無料化論を検討する
「日本列島快走論」について/生活圏が広がるとどうなるか/交通現象としての検討
あとがき
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