書籍内容
天笠啓祐[著]
四六判上製/224頁/1600円+税
ISBN978-4-8461-1111-3 C0036
東電福島第一原発では、終熄作業の目処すらたっていない。電力会社は原発建設にまい進しただけでなく、「オール電化」を推進して電力需要の拡大を図り、政府がそれを後押しすることで、原発に依存する社会を作ってきた。その意味では、政府や電力会社が招いた人災である。また過去の原発の事故が警告し続けてきたことを生かさなかった、起こるべくして起きた事故といえる。
広島、長崎の被爆経験を持つ日本で、大規模な核惨事が起きたことは、言いようのない悲劇である。それをもたらした組織、人物たちの共同の犯罪といえ、その罪万死に値する。原発事故は、最後には多くの人に犠牲を求めることになる。これからは、いつ果てるとも知れない長期にわたり、かけがえのない空気と大地と海、食品や飲料水が汚染されつづけ、被害は多くの人々を生涯にわたって脅かすことになる。(2011.7)
■内容構成
はじめに
第1章 最悪の事故発生
史上最悪の核惨事/冷却材喪失事故とは/四機同時事故が対応を複雑にする
起こるべくして起きた事故
第2章 ウラルの核惨事への道
原発は原爆製造から始まった/戦後の原子炉開発の歴史/米国では高速増殖炉が本命
原子力潜水艦/軽水炉の時代へ/高速増殖炉で事故発生/初期の原発事故
空軍基地爆撃機が墜落炎上事故/ウインズケール事故/ウラルの核惨事
廃棄物が臨界爆発/臨界事故/SL1炉・暴走事故/エンリコ・フェルミ炉事故
輸送事故・軍事事故/日本分析化学研究所事件
第3章 スリーマイル島原発事故への道
美浜原発燃料棒折損事故/廃棄物処理場の汚染事故/原子力船むつ漂流
ブラウンズ・フェリー原発火災事故/スリーマイル島原発・炉心溶融事故
再処理工場での事故/ラ・アーグ再処理工場停電事故/敦賀原発の汚染事故
カルカー原発ナトリウム火災事故
第4章 チェルノブイリ原発事故起きる
チェルノブイリ原発・暴走事故/遅れた避難/石棺づくりへ/北半球を汚染
被害を小さく見せる国際評価/ヨーロッパ各国の対応/日本でも食品汚染が
三七〇ベクレルの意味/ギロチン破断事故/イギリスでもギロチン破断事故
増殖炉先進国フランスも挫折/ロシアでも頓挫/福島第一原発の火災・美浜原発の落雷事故
福島第二原発事故/美浜原発事故/蒸気発生器の問題点とは
第5章 もんじゅ事故・JOC臨界事故発生
高速増殖原型炉もんじゅで事故起きる/動燃事故/動燃誕生の背景/堕ちた看板
末期症状を迎えていた動燃の現場/敦賀原発の配管亀裂事故/JCO臨界事故起きる
事故の背景/原子力事故での最初の犠牲者/病気との闘い/国の政策の犠牲者
多数の被曝者/被曝労働者は被曝者に含まれない/美浜原発一一人死傷事故
志賀原発臨界事故/新潟中越沖地震による柏崎原発事故
第6章 過去の事故と福島の事故
繰り返されてきた事故/経済性優先/繰り返される隠ぺい・ねつ造・改ざん
無視される安全教育/多重防護という名の傲慢/被害はいつも市民に
事故の過小宣伝と早過ぎる安全宣言/事故は時間と場所を選ばない
第7章 福島の核惨事と放射能汚染
放射能がもつ性質とは/放射線とは/本当に怖いのは晩発性障害/家畜の奇形から始まった
放射線/放射線と防護基準の歴史/アララの理論の登場/許容線量から実効線量当量へ
食と農への影響/チェルノブイリの放射能被害/負の遺産を抱えながら生きる時代へ
終 章
社会のあり方を変えることができるか/温暖化と原発推進/環境はカネでは買えない
バイオ燃料は食料問題を引き起こす/大規模自然エネルギーは環境を破壊する
危険な水素利用/地域循環型社会にエネルギーも組み込む
あとがき
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