希望を捨てない市民政治─吉野川可動堰を止めた市民戦略

¥ 2,000 (税別)

書籍内容

村上稔[著]
四六判並製/200頁/2000円+税
ISBN978-4-8461-1310-0 C0036

それまで無関心だった私が政治に関わることになったきっかけは、吉野川に巨大なダム=可動堰を造るという国の計画に反対する市民運動でした。この市民運動は吉野川を守りたいという一念から住民投票請求に立ち上がり、議会で否決された後、選挙で自分たちが乗り込むことによって議会構成を逆転し、住民投票を実現させ、最終的に国の可動堰計画を中止に追い込んだのです。
この運動の戦略と経緯を、その渦中で体験してきた私が今、確信を持って言えるのは、政治というのは、けっして「変えられない絶望的な現実」ではなく、あくまでも現実を変えるための「道具」であるということです。そんな政治の変え難さの実情と原因を知り、絶望を希望に変えるための、ツボをついた市民政治とはどのようなものか、その要点を考えてみました。(2013.05)

■内容構成
はじめに
第一章 吉野川第十堰問題との出会い
バブル時代が終わり、故郷へ
豊かな自然は妄想だった?
姫野雅義さんとの出会い
吉野川第十堰改築に疑問あり
ダム・堰計画に市民の声を
審議委員会は「お墨付き機関」
細川内ダムが中止へ
審議委員会をウォッチする
第二章 市民運動が民意を練った
市民運動はロッククライミング
審議委員人選の公平性
審議委員会を公開させる
「土俵作り」とマスコミの力
必要性が揺らいだ可動堰計画
吉野川シンポジウム実行委員会・
第三章 民意と議会のねじれ~住民投票へ
参議院選挙で決着を
可動堰反対を言わせない
審議委員会と民意のねじれ
住民投票で決めよう
第十堰住民投票の会が発足
政党とは距離を保つ
レファレンダムとイニシアティブ
住民投票署名がスタート
運動のデザインを大切にする
署名が一〇万人を突破
徳島市議会、住民投票を否決
第四章 あきらめない~自分たちが選挙に出よう
あきらめる、とは認めること
「一点突破」で全面展開するか
選挙に打って出る大義
ガス抜き議員では意味が無い
希望を取り戻すための勝算
市民を信じる一枚のチラシ
出てくれる候補者を探す
自分が出るしかない
第五章 怖いものなしの素人選挙
住民投票を実現させる市民ネットワーク
住民投票の是非が争点に
受任者リストは使わない
選挙事務所はボロボロの作業場
後援会ニュースは折り紙絵本
交差点一分間演説でトランス状態
予想を覆し九位当選
第六章 究極の選択で住民投票条例成立
せっかくバッヂをつけたのに?
一〇万人の民意を背負って代表質問
はじめての委員会
町のカタチは官僚が決める
政治家を動かすのは支持者
五〇%なければ開票しない
究極の選択
大逆転の住民投票条例可決
「123」のプラカード大作戦
推進派はボイコット運動
住民投票成立~市長、可動堰反対を表明
第七章 希望を捨てない市民政治のために
ビジョンを持って論理的に
マスコミ畑を根気よく耕せ
楽しみながら運動を強くする
第八章 市民が知事を作った
アリが巨象に挑む
市民の勝手連で大田知事誕生
官僚の「振り付け」につまずく
国からの出向役人なんのため
権力者は何もできない
不信任で辞職に追い込まれる
第九章 市民政治が三・一一後の希望の光
政権交代で深まる政治不信
ナショナルミニマムが元気を奪う
「自治」で元気を取りもどす
生きる意味がすり潰されていく市場経済
市民政治がエコロジー社会を実現させる
「足るを知る」新しい世界市民へ
あとがき

納品について

版種類

印刷製本版, 電子書籍版

書評

政策欠陥への警鐘 沖縄でも

日本では、この 20 年あまりの間に、条例にもとづき 400 件を超える住民投票が実施されてきた。 投票はなぜ求められてきたのか。村上稔『希望を捨てない市民政治』は、住民投票運動の当事者による回顧録である。記述からは、行政を統制することの困難さや議会の機能不全など地方政治の問題点が透けて見える。ある日、そのような現実に直面した市民たちにとって、住民投票はこれらを是正するための「最後の手段」であった。 ただし住民投票という手法は、今なお論争の的でもある。(…)

【上田道明・仏教大学教授/地方自治論】 ◉『朝日新聞』2019年2月20日付より。

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