書籍内容
姜柱源[著]市村繁和[訳]
四六判上製/240頁/2400円+税
ISBN978-4-8461-2202-7 C0026
中朝国境の大河・鴨緑江を挟んで北朝鮮・新義州と向かい合う中国・丹東。この2つの都市は、世界に広まったその断絶のイメージとは異なり、国境を挟んだ多彩で活発な交流によって、互いを支え合う国境都市だ。それは脱北者たちの脱出ルート、あるいは北朝鮮の鏡とは異なる姿といえる。そこで北朝鮮人・北朝鮮華僑・中国朝鮮族・韓国人の4集団および中国人たちは活発に貿易し、交流を繰り広げる。こうした暮らしぶりを丹東の人びとは「鴨緑江には国境がない」と表現する。
韓国の気鋭の人類学者が中朝国境都市・丹東に赴いて彼らのあいだで暮らしつつ、こと細かに観察してしたためた迫真のルポルタージュ。
■内容構成
はじめに
第一章 人類学者、国境都市・丹東を読む
国境を築くことと国境を崩すこと
中朝国境と四集団
中朝国境は、暮らしの道具であり現場
丹東を読むための準備
国境を読むことを実践する人びと
第二章 現場のなかへ
はじめに─私に迫った三つの異なる風景
人脈づくり─友人らを通じて学ぶ
フィールド・ワークの深化─関係を結ぶことの難しさ
アイデンティティに悩む─研究者であったり、「安企部の職員」であったり
まとめ─帰国の挨拶と終わらない因縁
第三章 四集団のはなし─北朝鮮人・北朝鮮華僑・朝鮮族・韓国人
「鴨緑江は海より深い」
出産プレゼントに込められた国境の意味
三カ国が出会う場・丹東
一九九〇年代という転換点
彼らはなぜ互いに出会い、交わろうとするのか
帰属国家を念頭に置く人びと─北朝鮮人と韓国人
丹東が未来である人びと─北朝鮮華僑と朝鮮族
第四章 丹東、三カ国貿易の中心地
丹東の「未来言説」が見逃しているもの
丹東、三カ国の熾烈な貿易戦略が繰り広げられる都市
三カ国を連結する中朝友誼橋と丹東フェリー
北朝鮮で消費される中国産と韓国産をめぐる謎解き
国境貿易、「中朝経済」に空いた余白
原産地は重要ではない─もうひとつの国境崩し
中国企業の実質的な社長は誰か
南北経済協力は韓国の一方的な施しなのか
第五章 中朝国境のふたつのコード、境界あるいは共有
境界─鴨緑江と中朝国境に向けられる先入観
共有─中朝国境は障壁ではない
「登岸はしたけれども、越境はしなかった」
国境を築く方法─戦争の歴史を利用する
もうひとつの境界─イメージ─鉄条網・鴨緑江大路・高層マンション
一歩跨、出会いの場所から国境体験の空間へ
国境観光コースの開発現場と「舞台化された風景」
第六章 四集団、コリア語を共有する─国民・民族アイデンティティの地形図
北朝鮮・コリア語活性化の背景
コリア語─暮らしの道具であり、関係を結ぶための戦略
公式・非公式の出会いの共存─人知れず酒を奢る
韓国人が三集団に出会う方法
出会いの空間
北朝鮮レストラン、北朝鮮という他者を消費する空間
国民・民族アイデンティティに対する戦略─現わす、隠す、往来する、確認する
四集団のアイデンティティの象徴─国旗・地名・言葉づかい
第七章 丹東、三カ国の過去・現在・未来
ニュースづくり─我われが知っている北朝鮮ニュースの虚像
過去に投影された現在─丹東経済に潜んだ特殊な時間
丹東開発言説に注目する
丹東、マクロとミクロを結ぶ国境の現住所
参考文献
訳者あとがき
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