クルーハウスの秘密─第一次世界大戦の英国プロパガンダ戦争の内幕

¥ 2,600 (税別)

書籍内容

キャンベル・スチュアート[著]
松田あぐり・小田切しん平[訳]
四六判上製/260頁/2600円+税
ISBN978-4-8461-2214-0 C0031

戦争について書かれた本は、それこそ数限りなく存在するのだが、ここに新たな一冊を書き加えようとすることは、なかなかの勇気がなければできるものではない。しかし私がこの本を書くべきだと考えたのは、1918年に、わが英国が敵国に対して行った目覚ましいプロパガンダ戦争の物語であること、さらにそこには、ある意味で先駆的な歴史上の活動を記録しているからである。
平和に向けたさまざまな原則が確定されるまで、このような本の出版は、待たなければならなかった。これには、連合諸国の政府が困惑するような内容の文書を含む可能性もあったので、機会が熟す前の出版は不可能であった。
しかし、もはやそのような懸念はないだろう。クルーハウスのプロパガンダ戦争に関するその組織、行動は、かつての世界大戦中、そして平和を確立していく時期には、一般の人々に秘匿されねばならなかったが、時の経過につれて。そのような必要も自ずとなくなったのである。(本書序文より)(2022.9)

■内容構成
序文
第一章 プロパガンダ─その善用と悪用
プロパガンダの定義と公理
ルーデンドルフ将軍の悲嘆と賛辞
第二章 クルーハウス─その組織とメンバー
ノースクリフ子爵の任命
顧問委員会の設立
クルーハウスの組織と活動
他の政府機関との協力体制
第三章 オーストリア・ハンガリー二重帝国に対するプロパガンダ作戦 ─プロパガンダ作戦の最も成功した例
ハプスブルク帝国内の諸民族の反ドイツ感情
一九一五年のロンドン秘密条約が障害となった南方スラブ人について
ハプスブルク支配下で迫害されている諸民族のローマ会議へ
ローマ会議の決議内容について
オーストリア=ハンガリー二重帝国へのプロパガンダ方針
外務大臣バルフォア氏とノースクリフ卿との書簡
英、伊、仏、米のロンドン会議
イタリア戦線でのプロパガンダ戦の様子
イタリア政府部内からの妨害に対して
ピアーヴェ川の戦いでの勝利
一九一八年八月、クルーハウスで開かれた対敵プロパガンダ連合国会議
ハンガリーの農地問題とブルガリアの崩壊
対オーストリア・ハンガリー作戦の成功理由とは
第四章 対ドイツのプロパガンダ作戦
大戦初期、英国はプロパガンダ活動を無視していた
ドイツ語、フランス語のプロパガンダ
飛行機から気球による配布へ
印刷物を空中から投下する仕掛け
対ドイツ・プロパガンダ方針の策定へ
H.G.ウェルズ氏の覚書─序文
H.G.ウェルズ氏の覚書─本文
H.G.ウェルズ氏の覚書─国際連盟、あるいは世界議会へ
H.G.ウェルズ氏の覚書─国際連盟の組織について
H.G.ウェルズ氏の覚書─終戦後の領土の調整
H.G.ウェルズ氏の覚書─終戦後の世界再建と軍縮
H.G.ウェルズ氏の覚書─ドイツの貴族階級、ユンカーに対して
H.G.ウェルズ氏の覚書を要約した、ノースクリフ卿から外務大臣バルフォア氏への書簡
ノースクリフ卿の補足の書簡
プロパガンダの基本方針とウェルズ氏の活動
クルーハウスと軍情報部との密接な関係
ドイツ側の動揺
飛行機による配布再開に向けて
戦局の好転で増大するプロパガンダの効果
Uボート艦長の戦死、捕虜リストまで
ドイツの末路を描き出すプロパガンダ
プロパガンダを浸透させたさまざまな方法
第五章 敵国ドイツからの賛辞
ドイツ国内に浸透するプロパガンダ
ヒンデンブルク元帥の激しい反応
家庭の精神をも毒そうとしている(ヒンデンブルク元帥の声明・続き)
ドイツに関する事実と幻想 (ヒンデンブルク元帥の声明・続き)
祖国への裏切り者たち(ヒンデンブルク元帥の声明・続き)
フーチェル将軍の通信より
リーフレットを届け出ると報奨金がもらえるが…
ドイツ側のプロパガンダ組織は
ルーデンドルフの戦後の賛辞
第六章 対ブルガリアのプロパガンダ作戦と他の活動
対ブルガリアのプロパガンダにおける特有の難しさ
ノースクリフ卿の外務大臣バルフォア氏への書簡と、その返信
ブルガリアに向けた四項目の予備条件
捕虜に向けた教育活動
第七章 連合諸国の協力体制
プロパガンダの公理
オーストリア・ハンガリー帝国へのプロパガンダ
ブルガリアへのプロパガンダ
ドイツへのプロパガンダ
連合諸国間のプロパガンダ活動の調整
戦争の原因に常に立ち戻ること
連合諸国はあくまでも戦う
プロパガンダはあくまでも真実であること
アメリカ合衆国からの支援
四つの委員会の発足
政策委員会からの報告
ブルガリアへのプロパガンダ
ポーランドに対して
アルザス、ロレーヌ問題について
ドイツ国民へのプロパガンダ
配布委員会でのさまざまな議論
民間を通じたプロパガンダ
資料委員会の考える正しい路線
革命を促すプロパガンダは
対ブルガリアのプロパガンダ
各プロパガンダ機関の相互協力体制
第八章 戦時下のプロパガンダから和平へのプロパガンダへ
英国の政策調整について
和平に向けたプロパガンダの研究
クルーハウスの取り組んだ活動の概説
和平への攻勢へ
ノースクリフ卿の声明草案
議論の余地なき条件と、交渉可能な条件について
この声明草案をめぐって
ノースクリフ卿が描く戦争から平和への段階と条件
ノースクリフ卿が描く第一の段階について
ノースクリフ卿が描く第二の段階について
ノースクリフ卿が描く第三の段階について
記事に対する反応と大戦の終結へ
第九章  最後の挨拶
後書き
この本について
現在の戦争と直結する第一次世界大戦

納品について

版種類

印刷製本版, 電子書籍版

著者紹介

著者紹介:キャンベル・スチュアート(1885~1972)
1885年、カナダ、モントリオール生まれ。カナダ首相の使節や駐在武官として活動後、英国から派遣されていたノースクリフ卿の秘書を務める。
第一次世界大戦中に、ノースクリフ卿と共にロンドンに移り、対敵プロパガンダ機関、クルーハウスの次長となる。
1920年に復員し、ノースクリフ卿が経営する『ザ・タイムズ』紙の経営陣に入り、翌1921年には『デイリー・メール』紙の編集長となった。そして1960年まで『ザ・タイムズ』紙の取締役であった。
第二次世界大戦の勃発で、彼は再び対敵プロパガンダ機関で活動し、所長を務めた。

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