書籍内容
矢ヶ﨑克馬[著]
四六判上製/188頁/2500円+税
ISBN978-4-8461-2415-2 C0036
原爆投下による「放射性降下物は極少だった」とする米国の核戦略により、放射線被曝分野では、戦後一貫して内部被曝の隠蔽に政治も科学も総動員され、内部被曝を無視した被爆者援護法は巨大な差別を生み出した。さらに東電福島原発事故では、国際放射線防護委員会(ICRP)に追随する政府は放射線被曝を受忍させ、若者に多数の甲状腺がんが発症しても因果関係を認めない政策をとっている。政府は事故後の死亡者数や健康被害を明らかにすべきである。
本書は、ICRPをはじめ国際原子力ロビーが「被曝の現実を知らしめない」ために構築されてきた虚偽の世界を、科学的・人権的な原点に立って批判し、放射線防護の在り方を提言する。(2024.12)
■内容構成
まえがき─3
§1 なぜ新たな防護体系が必要か? ............................13
第1節 ICRPは功利主義に基づく体系─13
第2節 ICRP体系は科学原則を無視する体系であ
る─20
§2 ICRPの功利主義哲学.........................................31
第1節 生存権と公益が天秤に掛けられる─31
第2節 功利主義哲学の変遷─32
第3節 被曝被害隠しと被曝強制の哲学─34
§3 国際放射線防護委員会の哲学(防護三原則)につ
いて.................................................................................37
第1節 行為の正当化─37
第2節 防護の最適化─39
第3節 線量限度と参考レベル─40
§4 国際原子力ロビーの「防護せず」の開き直り.......43
第1節 チェルノブイリ法─43
第2節 現実の健康被害を認めない「科学」の二極化
─45
第3節 原子力ロビーの防護から防護せずヘの豹変
─48
第4節 IAEAの1996 年会議「チェルノブイリ事
故後10 年」─50
第5節 住民を高汚染地域に住み続けさせる具体策:
ICRP 2007 年勧告─52
第6節 東電福島原発事故の放射能汚染の実態─55
§5 東電福島原発事故......................................................59
第1節 主権放棄、法治主義放棄、国際原子力ロビー
への服従・傀儡化─59
第2節 法治国家の放棄―いかに人権が切り捨てられた
か?―─60
第3節 基本的人権・法治国家から見た東電事故処理
―国は住民に「被曝せよ」と迫った― ─64
§6 東電原発事故後の健康被害......................................71
第1節 放射線被曝被害はなかったのか? ─71
第2節 小児甲状腺がんの高率発生─75
第3節 甲状腺被曝線量測定は誠実に実行されていな
い─79
§7 事故以来9年間で何と63 万人の異常過剰死亡と
57 万人の異常死亡減少..........................................91
第1節 厚労省人口動態調査─91
第2節 日本独自の被害─92
第3節 性別年齢別死亡率―死亡率増加と減少の2パ
ターンが判明― ─94
第4節 年齢調整死亡率及び粗死亡率─107
第5節 多数の死亡分類で2011 年以降死亡率増加
─109
第6節 原因別死亡数(老衰、精神神経系および個別障
害)─111
§8 死亡以外の健康被害.................................................117
§9 チェルノブイリと日本の比較.....................................123
§10 内部被曝を無視した被爆者援護法の基準は巨大
な差別を生んだ.......................................................... 135
―内部被曝無視を誘導した科学を批判する―
第1節 米核戦略による内部被曝隠蔽と被爆者援護法
─136
第2節 被爆者援護行政における差別制度─141
第3節 長崎被爆体験者訴訟および広島黒い雨訴訟弁
論で確認した主たる科学的事実─147
第4節 衝撃波が原子雲を育てたのではない─151
まとめ─154
§11 ICRPの科学からの逸脱..................................155
第1節 核抑止論と内部被曝隠蔽─155
第2節 内部被曝を見えなくするための数々の仕組み
─ 156
第3節 2要因ある因果律を1要因に絞ったICRP
基準─158
第4節 修復の困難さ─分子切断と生体酵素との対応
─ 161
§12 科学的リスク評価体系.............................................167
第1節 評価すべき内部応答─ 167
第2節 リスク評価の方程式─ 168
参考文献─171
あとがき─183
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