書籍内容
天笠啓祐[著]
四六判上製/208頁/1900円+税
ISBN978-4-8461-0909-7 C0036
人々から希望を奪ったグローバリズムが、他方で環境破壊を地球規模にまで拡げ、生物多様性の崩壊に歯止めがかからない状況にある。生物多様性の宝庫である熱帯雨林の消失をはじめ、気づかれずに絶滅した生物種も多数にのぼる。農薬や化学肥料の大量使用はさまざまな生物種を死滅させ、遺伝子組み換え技術は生物多様性の新たな脅威になっている。生物多様性の危機は人類の滅亡の序曲ともなりかねない。生物多様性を守ることは、人間の未来を守り、地球全体を守ることにもなる。
本書は、生物多様性の危機の元凶が多国籍企業の活動にあること、どうすれば危機を乗り越えることができるかを明らかにする。(2009.9)
■目次
はじめに
第1部 生物多様性条約とカルタヘナ議定書
第1章 生物多様性とは?
ドイツ・ボンにて/生物多様性とは?/生物多様性条約とカルタヘナ議定書の役割
地球の多様性を守るために/生物、生物多様性はどのように定義されているか?
一〇年ごとに開かれる国連環境サミットで条約が成立/多国籍企業が奪う生物多様性
第2章 生物多様性条約の争点
先進国と途上国の利害が対立/ABS問題とは? その争点とは?
起点はバイオ・パイラシー(生物学的海賊行為)/ガイドラインか、法規制か
第3章 カルタヘナ議定書とその争点
カルタヘナ議定書とは?/責任と修復(救済)とは?
なぜカルタヘナ議定書が大事なのか?/二〇一〇年名古屋での争点とは?
●遺伝子組み換え作物と生物多様性条約関連の年表
第2部 遺伝子組み換え生物と生物多様性
第1章 遺伝子組み換え作物はどのように生物多様性を破壊するか
遺伝子組み換え作物の現状/殺虫性作物・耐性害虫の拡大
除草剤耐性作物・耐性雑草の拡大/野生生物・原生種の汚染
昆虫の寿命等への影響/増えてきた蜜蜂への影響調査
飼料などによる家畜への影響/相次ぐ未承認作物の交雑・混入事件
第2章 遺伝子汚染を防ぐことは可能か?
遺伝子汚染と共存問題/どのような実験か?
北海道の交雑試験の結果、距離もネットも汚染防止にならず
第3章 遺伝子組み換え動物が食品に
米国で遺伝子組み換え動物食品の審査始まる/魚が最初に登場
遺伝子組み換え動物の問題点とは?/もしGM動物が逃げ出したら
遺伝子組み換え動物には異常が多い/食文化へも影響
第4章 体細胞クローン家畜
食品として安全との評価/米国に配慮して結論を急いだ
体細胞クローン家畜に異常が多いのはなぜ?/余りにも多い、これまでなかったこと
粗雑な実験の域を出ていない
第3部 生命特許とグリーン・ニューディール政策
第1章 生命特許・遺伝子特許
ABS問題の原点/生命に特許を/米国の知的所有権戦略
遺伝子組み換え作物の特許と種子支配/新たな戦略産業としてのバイオ産業
●生命特許関連の年表
第2章 オバマ政権とバイオ燃料
オバマ政権と新農務長官/温暖化対策として持ち上げられる/バイオ燃料とは?
日本での取り組み/なぜブームが起きたのか?/バイオ燃料は環境を破壊する?
第二世代バイオ燃料/小規模で行うことが大切
第3章 グリーン・ニューディール政策と地球環境
すり替えの論理/環境保護の旗手が投下した劣化ウラン弾/カネで環境を買う思想
代替エネルギーは環境破壊を加速する/危険な水素利用計画
エネルギーも地産地消へ
第4部 生物多様性を守る取り組み
第1章 市民による遺伝子組み換えナタネ自生調査
志布志湾へ/拡大するGMナタネ自生/市民が全国調査を開始する
GMナタネ調査結果 二〇〇五年/GMナタネ調査結果 二〇〇六年
GMナタネ調査結果 二〇〇七年/GMナタネ調査結果 二〇〇八年/結論
二〇〇九年、群馬へ
第2章 拡大するGMOフリーゾーン(GM作物のない地域)
綾町へ/欧州から広がった新しい運動/スローフード運動との連携
日本では滋賀県から始まる/大豆畑トラスト運動発祥の地・山形県新庄
大豆畑トラスト運動とは?
第3章 自治体の遺伝子組み換え作物栽培規制の条例化
なぜ規制が広がったのか?/問題発生県で指針・方針がつくられる
北海道・新潟県で規制条例できる/市町村にも広がり始める
おわりに 食と民主主義
スイスへ/国民投票でGM作物「ノー」/第五回目の会議
スイス時計のように正確に進行する会議
あとがき
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