新共謀罪の恐怖─危険な平成の治安維持法

¥ 1,800 (税別)

書籍内容

平岡秀夫・海渡雄一[共著]
四六判並製/288頁/1800円+税
ISBN978-4-8461-1704-7 C0036

「共謀罪」が「テロ等準備罪」と呼び名を変えてまた登場してきた。安倍政権は「東京オリンピック・パラリンピックに向けてのテロ対策として必要」と力説する。だがはたしてそうか?
共謀罪は、複数の人間の「合意そのものが犯罪」になるというもので、被害が起きた犯罪を処罰することを原則とする近代日本の刑事法体系を覆し、盗聴・密告・自白偏重による捜査手法を助長させ、政府に都合の悪い団体を恣意的に弾圧できる平成の治安維持法といえる。
本書は、「共謀罪」の成立を阻止してきた専門家による緊急出版!(2017.3)

■目次
まえがき
「共謀罪創設問題」の再登場
世論操作の状況を憂う
「共謀罪創設問題」の本質を見失うな
共謀罪創設は政治の問題
第一章 共謀罪を知る
1 共謀罪創設の新法案の提出
2 「共謀罪」とは、何か
共謀罪とは何か、そして、なぜ登場したのか
国内の立法事実はないと説明していた政府
3 共謀罪法案はなぜ制定してはならないのか
共謀罪は近代刑法にそぐわない
共謀罪は監視社会をもたらし、市民を萎縮させる
4 「国際組織犯罪防止条約」の本質は何か
5 共謀罪をめぐるこれまでの経過
6 越境組織犯罪防止条約の条約審議に危機感を覚えて(海渡と共謀罪の出会い)
共謀罪法案の前史
議会・国際人権団体のチェック機能が機能していない
7 瀬戸際審議に直面した共謀罪法案での政府・与党との闘い(平岡と共謀罪との出会い)
第二章 共謀罪創設へ、強まる圧力
1 テロ対策を錦の御旗に
政府の動き
マスコミの動き
櫻井よしこ氏は〇六年に国会で反対を表明していた
2 日弁連の苦闘
日弁連の意見形成
国際組織犯罪の関与はテロ組織への資金支援が中心である
条約の文言をそのまま国内法化する必要はない
3 増加する「国際組織犯罪防止条約」加盟国数
加盟国は一八七カ国
韓国は組織犯罪集団への参加罪を修正して批准した
4 アメリカからの圧力の増大
第三章 共謀罪をめぐる危険性の高まり
1 テロ対策を名目として共謀罪法案を提案することは許されない
テロ対策って、本当なの?
共謀罪法案の提案理由は「国際組織犯罪防止条約」の締結のため
2 「国際組織犯罪防止条約」はテロ対策とは無関係である
3 テロ対策のための刑事法の規定は十分である
4 共謀罪法案で新設される共謀罪はテロ対策とは無縁のものがほとんど
5 テロ対策で足りないものがあるかを個別に検討すべき
6 共謀罪の対象犯罪はますます増加しつつある
対象犯罪は六七六?
共謀罪の共謀罪までできてしまう
7 「未必の故意による黙示的な共謀」まで登場
目配せでも共謀は成立するとの政府答弁
選挙違反事件で問われた「未必の故意による黙示的な共謀」
8 改正された刑事訴訟法やNSAの世界盗聴網と連動して進む監視社会化
えん罪を克服するための改革のはずが
取調べに依存しない捜査を旗印に掲げられた盗聴拡大
一部録画は新たなえん罪を生み出す
共謀罪の創設は、盗聴捜査のさらなる大幅拡大を招く危険がある
9 共謀罪と司法取引が連動する恐怖
危惧されるのは、通信傍受(盗聴)との連動だけではない
密告を奨励する自首の必要的減免も復活
自首減免と司法取引(他人協力型協議合意制度)が連動したら
証人保護規定の強化がもたらすスパイ(覆面捜査官)潜入捜査
共謀罪は世界監視網と連動するか?
映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』の衝撃
大手IT企業のサーバーを丸ごと取るプリズム
海底ケーブルの情報を傍受できるSSOの恐るべき内容
パソコンにウィルスを仕掛けるCNE
日本もターゲットにされていた
秘密保護法は米国の指示によって作られた
日本はアメリカの情報を全面的に共有できていない
「秘密保護法を作ればトップ・シークレットも共有できますよ」
第四章 共謀罪法案の歴史を振り返る
1 「国際組織犯罪防止条約」はなぜ立案されたのか
「国際組織犯罪防止条約」の起草の経緯
条約の概要と付属議定書
条約の原点一九九九年を振り返る
国内での治安立法が直面した市民による抵抗と国際フォーラムを通じての突破
2 共謀罪の根拠とされる条約五条と三四条はどのようにして立案されたのか
第一読会 本条約案に異を唱えていた日本政府
英国の参加罪オプション
起草特別委員会第七回会合
なぜ、日本政府は共謀罪オプションを選んだのか
起草特別委員会第九回会合
起草特別委員会第一〇回会合
警察学論集今井論文の説明する三四条2項の立案経緯
法務省解釈に明らかに反する「公的記録のための解釈的注」
起草特別委員会第一〇回会合での条約二条に関する仏の提案
公電によって明らかにされた仏提案についての審議過程
本条約の適用範囲と三四条に関する日米加間の非公式協議の内容を明らかにする必要がある
三四条2項がまとめられた経緯についての政府説明は事実に反する
最後まで検討された重要犯罪のリスト
3 意外だった二〇〇三年法案提出での共謀罪の選択
我々は参加罪での国内法化を予測していた
法制審議会では国内的な立法事実はないとしていた政府
4 共謀罪法案を巡る国会での攻防
政府提出の共謀罪法案
与党修正案と民主党修正案の登場
四月二一日与党第一次修正案
四月二八日民主党修正案
五月一九日与党第二次修正案
与野党実務者協議の実施
民主党が提起した九つの課題
まとまらなかった与野党実務者協議の結果
与党参考試案の議事録掲載
5 民主党修正案に対する丸呑み偽装事件
民主党修正案に対する政府・与党の対応
丸呑みするが後で吐き出す
6 国会審議のテーマ別検証
(1)条約の留保(一般論)
(2)条約の留保(本条約関係)
(3)「国内法の基本原則」(条約三四条1項)との関係
(4)「重大な犯罪」
(5)「組織的な犯罪集団」(「団体」)
(6)「国際性の要件」(本条約三条及び三四条2項)
7 日弁連「共謀罪の新設なくとも越境的組織犯罪防止条約の批准は可能」の意

〇六年春の国会論議が産み出した日弁連新意見書
国連立法ガイドが締約国に認めている立法裁量の幅はかなり広い
新規立法を行った国はほとんどない
共謀罪を新設する以外にも条約を批准する方法はある
米国にも共謀罪が処罰されていない州がある
立法ガイドと解釈ノートの解釈をめぐる国際法論争
8 民主党政権のもとでの取組み
共謀罪法案なしで批准できないのか
民主党政策インデックス二〇〇九で示された方針
民主党政権は誕生したが
平岡法務大臣の検討指示
民主党政権時代に野党自民党と官僚はどのように動いたか
民主党政権での共謀罪問題解決は挫折した
第五章 治安維持法と共謀罪──戦争準備法制としての相違点と共通点
1 安倍政権による戦争準備法制の展開
2 戦時治安法制の構成
3 過激社会運動取締法案の提案と廃案
4 治安維持法制定時には「濫用のおそれのない完璧な法案」と宣伝された
5 治安維持法と共謀罪法案との共通点と相違点
第六章 政府新法案の問題点を解決する途はあるのか
1 新たな立法は必要ない──我々の基本的立場
2 政府新法案によって問題は解決されたか──新法案ではこんな事件も検挙され

3 共謀罪の対象犯罪(「重大な犯罪」)の限定
4 「組織的な犯罪集団」の関与を要件にすれば?
5 「準備行為」を要件にすれば?
6 「越境性(国際性)の要件」による限定は可能である
7 その他の問題について
共謀行為の定義を限定する
密告奨励の自首減免規定の削除
逮捕・勾留の要件の明確化
既遂犯と共謀罪との二重処罰の禁止
8 政府・与党に問う
資 料
一 国会審議のテーマ別検証
一 条約関係
二 条約と法案の関係・法案の内容
三 法律の運用関係
二 条約関係
1 国連国際組織犯罪防止条約(関連部分の抜粋)
2 国連国際組織犯罪防止条約立法ガイド(抄)
Ⅲ 実体刑法
三 法案関係
1 〇三年三月、〇四年二月及び〇五年一〇月の政府提出共謀罪法案(「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」の一部改正法案)
2 〇六年四月二一日の与党第一次修正案
3 〇六年四月二八日の民主党(当時)修正案
(同年六月一日に、与党が丸呑みするとしたもの)
4 〇六年五月一九日の与党第2次修正案
5 〇六年六月一六日の与党修正試案(衆議院法務委員会会議録に参考掲載)
6 〇七年二月二〇日付の自民党法務部会条約刑法検討に関する小委員会の検討結果に示された修正案骨子(国会議事録などには掲載されず)
7 一六年八月・一二月に与党議員に配布された資料に示された政府提出予定の新法案
あとがき

納品について

版種類

印刷製本版, 電子書籍版

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