書籍内容
日本弁護士連合会 第59回人権擁護大会シンポジウム第3分科会実行委員会[編]
A4判並製/240頁/3200円+税
ISBN978-4-8461-1707-8 C0032
本書は、日本弁護士連合会が2016年10月に開催した第59回人権擁護大会シンポジウム第3分科会の基調報告書「死刑廃止と拘禁刑の改革を考える~寛容と共生の社会をめざして~」並びに「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を収録したものである。(2017.5)
■目次
まえがき
人の命を奪うことは決して許されない
会内の手続
「人は変わり得る」が合い言葉となったシンポジウム
日弁連宣言の採択
巻頭 死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言
1 刑罰制度の改革について
2 死刑制度とその代替刑について
3 受刑者の再犯防止・社会復帰のための法制度について
提案理由
第1 犯罪とその被害にどのように向き合うのか
第2 刑罰の在り方が問われている
1 罪を犯した人が社会に復帰し、地域と共生し得る刑罰制度を
2 罪を犯した人を社会から排除しない
3 更生と社会復帰を刑罰制度の核に
4 刑務所における強制労働を廃止し、賃金制を採るべき
5 社会への再統合のための刑事拘禁以外の多様な刑罰メニューの提案
6 犯罪被害者・遺族の支援
第3 死刑制度の廃止を目指す
1 日本における死刑制度と当連合会
2 袴田事件:現実的な誤判・えん罪の危険性
3 国際社会における死刑制度
4 死刑制度はなぜ廃止しなければならないのか
5 死刑の犯罪抑止力について
6 情報公開と世論
7 死刑制度を廃止した場合の最高刑の在り方
第4 更生と社会復帰を軸とした刑罰制度の改革について
1 受刑者に対する基本的人権の制約を最小限にとどめるべきである
2 無期懲役刑受刑者を含む仮釈放制度の徹底した改革を
3 更なる施設内外の連携の強化を求めて
4 マンデラ・ルールに基づく刑事拘禁制度の再改革を
5 刑を終えた者に対する人権保障について
第5 今こそ我が国の刑罰制度全体の改革を求める
第1章 我が国における刑罰の現状と課題
第1 はじめに
1 我が国における刑罰の現状
2 国際社会から求められる刑罰制度改革
3 社会復帰・社会的包摂に資する刑罰制度
4 スペイン憲法の規定と「死刑」
5 社会復帰と社会的包摂の達成に資する刑罰制度実現を阻害するもの
6 国際社会における死刑制度
7 死刑事件の誤判・えん罪の現実的危険性
8 死刑の犯罪抑止力
9 2020年が意識されている
10 日弁連として「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を
第2 我が国の犯罪状況、刑罰とその執行状況
1 我が国の犯罪状況
2 刑罰の種類とその存在意義・問題点
3 刑法制定後の刑法改正の経過と刑罰論
4 立法による重罰化と量刑上の重罰化
5 死刑と無期刑との境界
6 刑法と刑事被収容者処遇法との齟齬
第3 受刑者像の実体─多角的分析
1 受刑者の罪名別・刑期別分類
2 入所の度数別分類
3 受刑者の年齢
4 受刑者の教育程度
5 受刑者の知的・精神障害の有無
6 犯罪時の無職率
7 出所時の帰住先
8 受刑者像のまとめ
第4 被収容者に対する処遇の現状と問題点
1 「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」の成立
2 肯定的側面:受刑者に対する処遇プログラム(一般・特別改善指導・先進的な新しい取組)
3 問題点
第5 社会内処遇・被拘禁措置の現状と問題点
1 執行猶予・再度の執行猶予・保護観察付き執行猶予の運用状況と問題点
2 刑の一部執行猶予制度導入と導入に至るまでの議論状況
3 仮釈放制度の現状と問題点・無期受刑者の仮釈放
4 保護観察の現状と問題点
第6 刑事施設と社会とを隔てている障壁・社会復帰への課題
1 刑事施設入所による基本的人権の制約
2 家族・勤務先・地域社会とのつながりの制約
3 社会内における医療、福祉的措置の遮断
4 施設内処遇と社会内処遇の連携の現状と問題点
5 社会復帰を妨げる障壁(職・住居・資格制限等)
第2章 国際社会から学ぶべき刑罰制度
第1 イギリス調査報告
1 ベルマーシュ刑務所見学
2 イギリスから学ぶ刑罰制度の在り方
第2 スペイン調査報告
1 調査の目的
2 スペインの刑事政策
3 訪問先施設の概要
4 スペインにおける取組から学ぶこと
第3 諸外国から学ぶ(フランス、イタリア、フィンランド)
1 はじめに
2 フランスの刑事施設医療改革
3 イタリア:レビッビア刑務所の演劇活動
4 フィンランドの刑罰制度
第3章 死刑制度について
第1節 日本における死刑制度について
第1 日本における死刑制度の概説
1 制度
2 運用
第2 日弁連の取組
1 日弁連のこれまでの人権擁護大会における宣言
2 高松宣言が「死刑のない社会が望ましい」とした理由
3 高松宣言以降の日弁連の活動とその成果
4 今後の取組
第3 日本における死刑制度の論点・問題点
1 えん罪の存在
2 戦前の死刑制度について
3 死刑と世論
4 犯罪被害者支援との関係
5 国際機関からの勧告を受けて
6 日本の無期刑の現状
第2節 死刑についての海外調査の結果
第1 イギリス調査(2016年)
1 死刑廃止に至る経緯
2 死刑に代わる最高刑
第2 スペイン調査(2016年)
1 死刑廃止に至る経緯
2 死刑に代わる最高刑
第3 2015年以前の海外調査のまとめ
1 死刑制度に関する大韓民国調査(2012年)
2 米国調査(2013年及び2014年)
第4 海外調査で判明した死刑制度廃止に至る経緯、死刑執行数減少の要因について1 はじめに
2 死刑判決がえん罪によるものと判明したことが死刑廃止に向かう要因になっていること
3 死刑制度が政治的に利用されてきたことに対する懸念
4 終身刑の存在がもたらしたこと
5 死刑制度を廃止したその他の事情
6 死刑廃止時における死刑制度に対する世論の動向
7 世界の死刑制度の現状
第3節 なぜ、今、日本は死刑制度を廃止すべきなのか
第1 はじめに
1 死刑制度についての最高裁大法廷判決の考え方
2 国民感情と期待される弁護士の役割
3 第59回人権擁護大会での議論の土台と目標
第2 「生命は、人の生存のみなもと」の視点
1 死刑廃止の議論の根底は「いのちの大切さ」
2 最高裁大法廷判決における死刑制度是認の立論について
3 小括
第3 「生命を奪う刑罰と自由を奪う刑罰の質的相違」の視点
1 それぞれの刑罰の目的は何か
2 死刑のえん罪・誤判は「誤りを償うことのできない刑罰」
3 小括
第4 「有るべき刑罰と社会復帰」の視点
1 今回の刑罰制度改革の考え方
2 社会復帰の途を閉ざす死刑との決別
3 小括
第5 第59回人権擁護大会で死刑廃止を目指す決議をする理由
1 行刑の目的は、罪を犯した人の更生と社会復帰
2 死刑制度は、国の責務に反する制度
3 国の犯罪被害者及びその家族や遺族に対する責務について
4 誤判・えん罪による無辜の人に対する死刑執行のリスクを防ぐためには、死刑制度を廃止する以外に方策はない
5 第59回人権擁護大会で、死刑廃止を目指すことを宣言しなければならない理由
第4章 求めるべき刑罰制度
第1 いまなぜ刑罰制度改革が必要か
1 刑罰制度の改革は、どのような考え方によって導かれるのか
2 死刑制度を維持することは憲法13条と36条に反しているのではないか
3 取り残されてきた刑法中の刑罰規定の改正
4 死刑制度がある限り、刑罰制度全体の改革は成し遂げられない
5 2020年国連犯罪防止刑事司法会議日本開催は刑罰制度の全面的な改革のチャンス
6 参考にすべきスペインの法制度
7 強制労働規定の廃止は刑事処遇システムの改革の好機
第2 刑罰の理念は何か 応報と正義の実現・更生と社会復帰
1 犯罪と刑罰の在り方について
2 罪を犯した人の更生
3 応報は拘禁そのもの
4 刑の言渡しに対する不合理な制約を撤廃する
5 自発性に基づく社会復帰支援こそ
第3 受刑者に対する基本的人権の制約を最小限にとどめるべきである
1 受刑者に対する基本的人権の保障
2 夫婦が親密な関係を持つ権利
3 子どもが母親によって養育される権利
4 受刑者の選挙権制限を原則として撤廃するべきである
5 受刑者に適用が検討されるべき労働保険、医療保険制度等
第4 強制労働の廃止と賃金制の採用
1 刑務所における強制労働と国際法
2 オーストリアとドイツの賃金制
3 ILO条約と刑務所における強制労働
4 社会権規約委員会2013年総括所見
5 強制労働でない刑務所労働と賃金制
6 日弁連の提言
7 具体的な制度改革の方向性
第5 マンデラ・ルールに基づく具体的な改革課題の特定
1 規律秩序の維持
2 健康と医療
3 法的援助へのアクセス
4 スタッフ
第6 施設内処遇と社会内処遇の連携
1 矯正と保護の連携
2 刑の執行停止制度と刑の執行順序の改善
3 仮釈放制度の改革
第7 社会内処遇・非拘禁措置の拡大
1 社会への再統合のための多様な刑罰・制裁措置メニューの提案
2 社会奉仕活動命令の制度的な導入
3 薬物依存からの治療・回復を目指すプログラムを刑法に取り入れる
第8 死刑に代わる最高刑の在り方について
1 はじめに
2 主な外国の終身刑(絶対的終身刑及び相対的終身刑)
3 現行無期懲役刑は仮釈放の可能性のある終身刑である
4 日弁連の無期刑受刑者に対する仮釈放制度改善の提言
5 日本における各種最高刑の提案
6 仮釈放の可能性のない終身刑は国際人権基準からは許されない刑罰である
7 ヨーロッパ人権裁判所は仮釈放の可能性のない終身刑は非人道的としている
8 死刑廃止後の最高刑についての検討
9 ピナル・リフォーム・インターナショナルの死刑の代替刑に関する12の提案
10 最高刑の在り方についてのまとめ
第9 資格制限等社会復帰への障壁の撤廃
1 「前科者」排除の法的体制
2 求められる制度の改善
3 資格制限の撤廃のために
4 刑を終わった者の就労支援
5 やり直すことのできる社会は人にやさしい社会
資料
1 内閣府が2014年11月に実施した世論調査
レビュー
レビューはまだありません。