書籍内容
上岡直見[著]
四六判上製/324頁/3000円+税
ISBN978-4-8461-2512-7 C0036
1968年に湯川利和(長崎造船大学・当時)の『マイカー亡国論 』が刊行された。湯川は、日本より半世紀先行してモータリゼーションが始まった米国の実情をもとにマイカー社会が何をもたらすか「地獄絵」を予想している。
それから60年経ちそれは現実となった。「マイカーがなければ生活できない」社会が形成され、ときには90歳を過ぎてもマイカーを運転し、死傷事故などの深刻な事態が発生している。一方で湯川がマイカー依存を押しとどめる主な役割を期待した公共交通機関は、現実は量的・質的に劣化が加速している。
本書では、マイカー社会の経過と実態を改めて検証し、マイカー社会をどう方向転換すべきかを提案する。(2025.11)
■内容構成
はしがき
第1章 マイカー必需化社会
国策としてのマイカー依存/牛乳一リットルにガソリン五〇〇㏄/公共交通の崩壊/公共交通軽視のイデオロギー/人々の健康を破壊するマイカー社会/マイカーの利用実態/エネルギー消費と交通公害
第2章 マイカーと社会的排除
社会的排除の発生/交通と基本的人権/働き方とマイカー/「医・食・住」/深刻な北海道の状況/ガソリンの入手格差/災害とマイカー
第3章 交通事故の構造的要因
交通事故の経緯と現状/クルマは一流、ドライバーは三流/事故は「ふつうの人」が起こす/ファクトチェックの重要性/クルマが走れば事故は不可避/都市の構造と交通事故/交通事故は「公衆衛生」の問題
第4章 被害の軽減
「池袋暴走事故」の真の責任者は誰か/大きく重いクルマ/過剰なパワーこそ主な原因/遅すぎた衝突軽減ブレーキ/遅れた歩行者保護対策/生活道路三〇㎞/時の拡大/ドライブレコーダーの設置と利用/厳罰化の無効性/飲酒運転/アルコールチェッカーの矛盾/飲酒以外の要因
第5章 自動運転の迷走
自動運転はマイカー社会の終焉/進展のない技術/技術の限界/自動運転車の社会的受容/「AIひき逃げ」の多発/深層学習の危険性/システム提供側の責任/経済安保法を盾にした隠ぺい/適用可能な分野/タクシー・バス等での利用
第6章 都市と道路
スプロール化/道路整備で渋滞は解消されない/道路整備の負担と受益/「停まる凶器」/歩行者・自転車の軽視/駐車場が渋滞を招く
第7章 公共交通の劣化
誰が「お客さま」なのか/公共交通の社会的価値/サービスレベルの劣化/「鉄道」とは「駅」である/鉄道は地域の核/利用者減少は沿線人口が要因か/電子化は人の代替にならない/「カタカナ技術」は公共交通を救わない/バリアフリー/「使えません」「通れません」/利用者視点の欠如/安全の根幹にもかかわる/バス転換は公共交通全廃への道/二〇年後の日本列島の姿
第8章 バスをどうするか
バスの社会的価値/バス崩壊の経緯/利用者も邪魔者か/バスは「わからない」/コミュニティバス/タクシーも崩壊
第9章 マイカーとトラックの密接な関係
マイカーとトラックの密接な関連/インターネットは物質転送機ではない/マイカー削減とトラック
第10章 地域を壊すリニア新幹線
本来の趣旨を逸脱したリニア新幹線/中間駅の位置づけ/神奈川県はよけい不便に/山梨・長野・岐阜各県もメリットなし/東九州新幹線
第11章 道路と公共交通の経済評価
自動車・道路依存からの転換/公共交通は「タイパ」が良い/道路より住宅を/道路より福祉事業を/マイカーをやめて公共交通に/地域のリニア新幹線便乗事業の経済評価
第12章 地域公共交通の制度と財源
地域公共交通の危機/鉄道の廃線を「上書き」する道路/「無料高速道路」はなぜ認められるのか/地域公共交通の経営的枠組み/社会的便益評価の必要性/交通従事者の待遇改善/ガソリン価格と公共交通
第13章 公共交通無料化が日本を救う
子どもと公共交通/路線バスは無料に/海外での事例/日本での事例/四十年前の「国鉄無賃論」/制度と財源の抜本的転換
おわりに









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