書籍内容
安藤陽・桜井徹・宮田和保[編著]
A5判上製/192頁/2500円+税
ISBN978-4-8461-2310-9 C0065
鉄道開業から150年目を迎えた2022年に、国土交通省の有識者検討会が『地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言~地域戦略の中でどう活かし、どう刷新するか~』という提言を公表しました。
この提言は、第三セクター鉄道や地方私鉄だけではなく、JRローカル線を含む地方の中核的な都市の周辺、それらの都市を連絡する路線も含めた在来線の見直しを提起するものです。
ローカル鉄道の見直しを提起する提言の理由は是認できるものなのでしょうか。私たちは提言の内容について批判的な視点からまとめました。(2023.10)
■内容構成
まえがき
第1部 ローカル鉄道問題はローカルだけの問題ではない13
1 はじめに
2 検討会設置の契機と背景
1 国土交通省の意図
2 コロナ禍での本州JRの「赤字転落」
3 地方自治体の要望: ローカル鉄道の意義と分割・民営化見直し
3 検討会と提言の枠組み・概要
1 検討会の委員構成と審議日程、審議資料
2 提言の構成と概要
4 論点
1 ローカル鉄道危機の要因:総合的把握が必要
2 国鉄分割・民営化と路線廃止の評価
3 地域公共交通活性化再生法における鉄道再生事例とその限界
4 特定線区再構築協議会とその問題点
5 あるべき方向
第2部 提言に対するQ&A
1 ローカル線を取り巻く現状に関するQ&A
Q1-1 ローカル線の経営困難の要因は何ですか?
Q1-2 「地域モビリティの刷新」の意味は何ですか? そこでは鉄道はどう位置付けられ、検討会の背景に何がありますか?
Q1-3 提言はローカル鉄道の利用状況や収支状況をどのように認識していますか?
Q1-4 経営が厳しいJR四国とJR北海道は、どのようにして経営を維持しているのですか?
Q1-5 ローカル鉄道はどのような形態の鉄道事業者が運営していますか? 形態の違いによって鉄道の運営に影響しますか?
Q1-6 提言はローカル鉄道を見直すと言っていますが、JRローカル線が対象ではないのですか?
Q1-7 国鉄分割・民営化のときにJRのローカル線問題は解決したのではないのですか?
Q1-8 JRのローカル線問題を考える場合、国鉄分割・民営化の評価は避けて通れない課題なのではないですか?
Q1-9 JR旅客各社にローカル線維持の義務を課した法令等はないのですか?
Q1-10 なぜいま内部補助のあり方が強調されるのですか?
2 ローカル鉄道の廃止と地域公共交通の利便性に関するQ&A
Q2-1 大量輸送だけが鉄道の役割なのですか? 大量の輸送需要がない線区は廃止しかないのですか?
Q2-2 鉄道やバスのような公共交通機関よりは、マイカーのための道路整備を優先したほうがよいのですか?
Q2-3 国鉄再建法でバスに転換され、あるいは第三セクター化された路線では、利用者の利便性は維持されましたか?
Q2-4 バスに転換したほうが利便性は良くなるのですか?
Q2-5 BRT方式への転換はどのように評価すべきですか?
Q2-6 JR旅客各社のローカル線改善策は利便性を向上させていますか?
Q2-7 鉄道の利便性を高めれば利用者を増やせるのではないですか?
Q2-8 「コンパクトでしなやかな地域公共交通」が利便性を高めるのですか?
Q2-9 利用客が少ないローカル線では、経費節減のため大都市部より安全基準・技術基準を緩和してもよいのですか?
Q2-10 鉄道の線区評価はローカル線の見直し基準になりますか?
Q2-11 鉄道が地域にもたらす経済効果とその測定方法にはどのようなものがありますか?
Q2-12 なぜ輸送密度1,000人/日未満の線区が検討対象なのですか?
Q2-13 JRは輸送密度2,000人/日未満の路線の線区別収支をなぜ公表したのですか?
Q2-14 JR旅客会社のなかで、なぜJR東海だけが輸送密度2,000人/日未満の線区の収支を発表しないのですか?
Q2-15 提言は特急列車や貨物列車が通過する路線は維持されるとしていますが、将来的にもそれは保障されるのですか?
3 地方自治体の責任と役割に関するQ&A
Q3-1 鉄道事業者と沿線自治体との間で、ローカル鉄道に関する連携は行われているのですか?
Q3-2 国と沿線自治体と鉄道事業者は、なぜ危機意識を共有していないのですか?
Q3-3 法定の各協議会や任意の協議会、今後設定される特定線区再構築協議会では、どのような議論がなされるのですか?
Q3-4 北海道で廃線の方向が決められた地域の協議会ではどのような議論がされたのですか?
Q3-5 各協議会において沿線市町村の役割はどのようなものですか? 一般の鉄道利用者の声は、なぜ届きにくいのですか?
Q3-6 改正地域公共交通活性化再生法の「協議運賃制度」とはどのような運賃制度ですか?
4 国の責任と役割に関するQ&A
Q4-1 国は1999年の鉄道事業法改正で鉄道の廃止を促進してきたのではないですか?
Q4-2 地域公共交通活性化再生法や交通政策基本法で「地域モビリティの刷新」はされなかったのですか?
Q4-3 「鉄道事業再構築事業」で鉄道の維持は可能ですか?
Q4-4 「上下分離」方式で鉄道の再生は可能ですか?
Q4-5 鉄道と道路の予算配分の見直しが必要ではないですか?
Q4-6 国の縦割り行政が鉄道施策に悪影響を与えているのではないですか?
Q4-7 提言で地域公共交通は「デジタル田園都市国家構想」の実現に不可欠な存在と述べていますが、本当にそうですか?
Q4-8 「『頑張っている地域』を応援する」だけで鉄道は存続できるのですか? 国の責任と役割があるのではないですか?
Q4-9 JR貨物は全国鉄道網を前提に、国が責任をもって運営に関与すべきではないですか?
Q4-10 提言では、協議会はローカル鉄道の廃止あるいは存続を前提に開催すべきでないとしていますが、本当ですか?
5 地域社会における鉄道の役割に関するQ&A
Q5-1 ローカル鉄道の経営困難を引き起こしたのは、政府の人口・地域政策ではないのですか?
Q5-2 北海道新幹線の延伸によって並行在来線のバス転換が決まりましたが、どのように議論されたのですか?
Q5-3 「地域モビリティの刷新」の先行事例として紹介されている事例は、適切な事例と言えるのですか?
Q5-4 地域公共交通を再構築させた先行事例が紹介されていますが、地域事情の異なるローカル鉄道に適用できるのですか?
Q5-5 ローカル鉄道を維持するために、沿線住民や市民はどのような役割が期待されますか?
Q5-6 提言では、被災した鉄道の復旧に、国として積極的に関与する政策を打ち出していないのはなぜですか?
Q5-7 欧州では地域の鉄道はどのように維持されているのですか?
Q5-8 総合交通体系を構築するうえで、JRローカル線はその基盤的な交通手段とはならないのですか?
第3部 地域のための鉄道を求めて
1 鉄道は「社会的生産過程の一般的条件」
2 JR北海道のもっている矛盾と二つの解決の道
3 第一の道における理論的な枠組み——「生産者と消費者」の欺瞞性
4 第二の道をもとめて——鉄道の再生の展望
資料
1 衆議院国土交通委員会における武田泉参考人の陳述(2023年3月17日)
2 参議院国土交通委員会における桜井徹参考人の陳述(2023年4月18日)
引用文献
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