書籍内容
川村晃生[編]
四六判並製/182頁/定価1500円+税
ISBN978-4-8461-2308-6 C0036
リニア新幹線は、死に体に近づきつつある。リニアが直面している困難は、財源不足、発生土の処理や静岡での未着工問題、大都市圏のトンネル掘削でのシールド工法の技術的問題、その結果導かれた大幅な工期遅れ、住民の反対運動など。そしてこれから直面する南アルプスのトンネル掘削、それに伴う南アルプスの壊滅的な環境破壊。
このまま、強行すれば、さらに大きな破綻を招くことになる。これらの問題を専門家が詳しく解説。
(2023.6)
■内容構
はじめに
Ⅰ リニアが抱えた困難
1章 国策民営事業としてのリニア中央新幹線 桜井徹
─財源問題に見る問題点
はじめに
1 JR東海という企業の三つの性格
2 国策民営事業としてのリニア中央新幹線─企業目的実現と国策の利用
⑴ 企業目的
⑵ スーパー・メガリージョン構想のJR東海による包摂
3 コロナウイルス禍とJR東海の経営
⑴ 輸送収入の減少と経営悪化
⑵ 新幹線輸送量減少と出張機会の減少
4 リニア中央新幹線工事費の増加と財源計画
⑴ 工事費増加の理由
⑵ 工事費調達財源に関するJR東海の試算
5 財源計画の不確実性
⑴ 長期債務
⑵ 経常利益
⑶ 財源計画と健全経営の確保・安定配当との対立の可能性
おわりに
2章 迷走する残土処分場探し 井澤宏明
1 四分の一の行方決まらぬまま
2 町長襲撃の町に恒久処分場
3 候補地は環境省の「重要湿地」
4 沿線初の公開フォーラム
5 「楽観」JR東海を有識者批判
6 地元自治体と「もたれ合い」
3章 なぜ静岡県でリニア工事が始まらないのか? 林克
はじめに
1 「毎秒二トン減る」から「湧水の全量戻し」
2 「全量戻し」から国の有識者会議へ
3 有識者会議の議論から中間報告へ
4 全量戻しの具体策と生物多様性問題、県境ボーリング
5 リニアが壊す南アルプス
4章 多くの不安を抱えたリニアのトンネル工事 大塚正幸
1 難しい日本のトンネル工事
2 トンネルの施工法と難工事
⑴ 難工事トンネル
⑵ トンネルの施工法
⑶ 土圧と湧水による難工事の実態例
3 南アルプストンネルは無謀なチャレンジ
⑴ 構造線に挟まれた一帯の異常な土圧
⑵ 高圧・多量の出水
⑶ 蔑ろにした地質調査
4 安全神話が崩壊した大深度地下のシールドトンネル 76
⑴ 外環道の陥没事故は他山の石
⑵ 泥土圧シールドの問題点
⑶ 技術の限界か─大深度大断面シールド
⑷ 事故防止に必要な想像力─欠かせない経験の継承
5章 リニア二〇二七年開業が遅れるのは静岡県のせいではない
樫田秀樹
1 静岡バッシングが始まった
2 他県でこそ工事は遅れている
3 二〇二七年開業という幻想
4 間に合わないはずの工事が間に合うことになっている
6章 工事中止と事業見直し求める市民、住民運動の拡大
天野捷一
1 市民、住民の声を気にしないJR東海
2 リニア新幹線沿線ネットワーク結成
3 高まる工事残土処理に対する反対の声
4 ついに、リニア工事の取り消しを求め提訴を決断
5 リニア反対─点から線へ、そして面へ広がる
Ⅱ リニアがこれから直面する困難
1章 南アルプストンネルの危険性─地質の観点から 松島信幸
総論
南アルプストンネル計画の問題点
1 南アルプスの地質に関するJR東海の誤った見解
2 南アルプスの地質とリニア計画
3 トンネル計画と地質
4 南アルプスの地質からみる問題
⑴ 高圧の山体内地下水に係わる問題
⑵ 断層・破砕帯と地震・工事
おわりに
2章 リニア新幹線の安全性 阿部修治
1 リニア新幹線の安全神話
2 高速鉄道としての安全性
3 リニア特有のリスク
⑴ 超電導磁石のリスク
⑵ タイヤのリスク
⑶ 地上コイルのリスク
4 なぜ安全性がおろそかにされるのか
3章 トンネル工事での地下水位低下と地表面沈下 越智秀二
─福木トンネル工事を例として
はじめに
1 福木トンネル工事の経過と概要
2 福木トンネル周辺の地形と地質
3 水涸れ被害の概要と対策
4 地表面沈下被害が顕在化
5 福木トンネル問題のその後
おわりに
Ⅲ リニアはなぜ失敗したか 川村晃生
はじめに
1 手抜きアセス
2 工事技術への甘い見通し
3 JR東海はなぜリニアを
4 二〇年問題と葛西敬之という個性 169
レビュー
レビューはまだありません。