書籍内容
臺宏士・井澤宏明[著]
四六判並製/280頁/2400円+税
ISBN978-4-8461-2216-4 C0036
「ガソリン携行缶持って館へおじゃますんで~」──。2019年8月、愛知県で開幕したばかりの国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」事務局にこの脅迫ファクスが送り付けられた。憎悪の矛先となったのは、「慰安婦」を象徴した「平和の少女像」だった。
旧日本軍の「慰安婦」制度や軍国主義下での天皇制、朝鮮人強制連行といった歴史認識の問題と絡んだ、メッセージ性のある作品の展示は近年、公立の美術館などでの展示が難しくなっている。過去に展示を拒まれたり、撤去されたりした作品を一堂に展示するという挑戦的な狙いの「表現の不自由展・その後」の中止は、こうした流れの中にあった。
本書は、「表現の不自由展・その後」をはじめ、2021年7月の「名古屋展」と「大阪展」、そして、22年4月の「東京展」など「表現の不自由展」をめぐる出来事の取材記録であり、表現の自由とは何かを考える。(2022.11)
■内容構成
まえがき
第1章 「表現の不自由展・その後」が中止
1 「不自由展」中止に働いた力
初日の会場は平穏だった
安倍政権下で表現の不自由社会に
河村たかし名古屋市長が電撃視察
菅義偉官房長官「補助金不交付も」
「ガソリン缶持っておじゃま」
韓国メディアの評価も一転
首長が相次いで「少女像」批判
神奈川県では右派イベントを許可
あいトリ事務局に「あなた日本人?」
制作意図と離れた批判
ベトナム・ピエタ
避けて通れぬ歴史認識の議論
作家らが巻き返し
Re Freedom_Aichi
再開に光、そして補助金不交付決定
再開はしたけれど……
誤った歴史認識を正さぬまま
2 中止と再開 弁護団長に聞く
再開求め仮処分申請
カギはニコンサロン事件判決
検討委は知事の中止判断を追認
あいトリ実行委は不自由委外しを提案
「中止の必要はなかった」
3 それは報道の不自由展だった
再開後は厳しい取材規制
不自由展実行委「広報姿勢における重大な過誤」
撮影許可は閉幕後
4 大村秀章・愛知県知事インタビュー
不自由展中止の判断は正しかった
少女像に「これがそうか」 開幕前に
パネル展示を要請
『遠近を抱えて…』は外そうと思った
海外作家らの相次ぐ展示中止に危機感
報道規制はやむを得ない
河村市長は証拠を示して説明を
日本は危険な社会になっている
【表現の不自由展・その後】出品作家と作品
第2章 連帯
1 立ち上がった海外作家たち
二割の出品作家が中止に抗議
「検閲された仲間のそばに」
扉開けたメッセージカード
2 中止に抗議して内容を変更・展示中止した作品
3 小泉明郎氏に聞く
「プロパガンダじゃない」
自主性奪った指定管理者制度
日本人作家への風当りも強く
第3章 補助金不交付
1 文化庁
宮田長官「私の権限では……」
国内外に余波
大村知事「文化庁と折り合った」
2 「宮本から君へ」の助成金不交付
ピエール瀧氏が薬物使用容疑で逮捕
東京地裁「裁量権を逸脱し違法」
東京高裁は芸文振の主張を追認
3 「主戦場」の上映中止決定
川崎市が示した懸念が発端
是枝監督「取り下げは映画祭の死」
東京地裁では監督側勝訴
第4章 愛知県知事VS名古屋市長
1 盟友・大村知事を見限り、見限られるまでに何があったのか
2 法廷闘争へ─名古屋市第三者委員会を検証する
名古屋市が負担金不交付を決定
三回の審議で不交付にお墨付き
田中由紀子氏「宗教・政治の影響は当然」
名古屋市が全面敗訴
3 署名偽造とリコール 河村たかし名古屋市長インタビュー
「許せない犯罪」
「厳しい結果になると思ってた」
「不自由展は表現の問題でない」
第5章 広がる表現の不自由展
中止と開催
郵便物から破裂音
完全開催できた大阪展
道路挟んで賛否両派が対峙
東京展は延期に
国立で1600人が来場
市「不当な差別あってはならない」
課題は過剰警備
あとがき
「不自由」な国ニッポン
歴史修正主義の終焉
「表現の不自由展」をめぐる出来事
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