書籍内容
竹原 あき子[著]
四六判上製/144頁/2000円+税
ISBN978-4-8461-2411-3 C0070
谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』は、あらゆるデザイナーにとってかけがえのない教科書だった。バイブルだった。ところが、あらためて読み返して、工業デザイン、プロダクトデザインに正面から襲いかかる槍のようなエッセイでもあった。何が良いか美しいか、ではなく、何が邪魔か、見苦しいか、使いにくいか、をデザイナーに問いかける、負から発して心地よさに到る道をさがす教科書だった。
現在の日本人の生活の西欧化、その衣食住から言語まで、思想から立ち居振る舞いまで、あらゆる面で和からの脱却を図った明治、大正、昭和のモダンと付きあった谷崎潤一郎、そして友人だった夏目漱石や森鴎外ら文豪達の作品を通して、デザイナーに何が必要かを問いただしてみよう。
(2024.11)
■内容構成
はじめに・8
一章 モダンとの戦い : 福澤、鴎外、夏目、谷崎、芥川 9
一 文豪五人のモダン・10、二 谷崎と四文豪の年齢差、そして福澤諭吉、それぞれの代表作品・11、三 谷崎のモダンとの戦い・12、四 谷崎と芥川のモダン:上海から・14、五 鴎外のモダン:日本語、書き言葉から・17、六 漱石のモダン:ロンドン・18、七 消えた建築家、漱石の夢・21、八 漱石:ヨーロッパ航路と近代都市、猫の目でモダン批判・22
二章 プロダクトデザイナー谷崎 25
一 谷崎と醜悪なモダン(電球、電話、電気ストーブ)・26、二 一〇〇年もかわらなかったモダンデザイン・27、三 コンセントが救った電化生活・28、四 電灯の色:谷崎のランプシェードのデザイン・30、五 谷崎は借家木造二階建てで・32、 六 文明開化と電気事情:電球はレンタル・34
三章 谷崎潤一郎がデザインした電気暖房 37
一 谷崎と電気炬燵・38、二 電気炬燵、丸山型・43
四章 カタカナで持ち帰ったモダン 45
一 谷崎と電線:アタチン登場・46、二 福沢、夏目、鴎外のカタカナ:モダンを牽引した・48、三 スリッパというカタカナ・52、四 カタカナ遊びの夏目漱石、和洋折衷は言語でも・53、五 外来の中国モダンと付き合い、無節操にカタカナ、ヨーロッパモダンを入れた・55、六 汚れも陰影。新語の不潔からカドをとる、カタカナとの戦い・57
五章 非日常の理論:暗さゆえの美 59
一 日本人は暗い部屋を好んだか・60、 二 谷崎の二つの見逃し・62
六章 谷崎の皮膚感覚とスマホ:ハプティクスは今 65
一 五感で、谷崎の皮膚感覚からスマホを:スマホがあれば友達はいらない・66、二 空気の肌触り:「ハプティクス(haptics)」・68、三 スマートハウスはいま・70
七章 谷崎:触覚のデザイン 71
一 触覚をデザインしたか・72、二 イタリア触覚のデザイン・73、三 キャノンとライカM2のシャッターボタン・74、四 物理ボタンに終わりはあるか・75
八章 『陰翳礼讃』モダンデザイン批判。建築と向き合った文豪 77
一 鴎外:健康住宅:椅子を選んだ・78、二 学校も椅子と上履きを選んだ・80、三 鷗外のモダンと伝統回帰・81
九章 モダンデザインへの問いかけ 85
一 光を求めたデザインの伝統・86、二 風と向き合う谷崎・87、三 庶民への啓蒙エッセイだった『陰翳礼讃』・90
十章 谷崎はケチだった 93
一 カタカナのケチは谷崎の心の隙間にあった・94、二 谷崎流ガラスと光のルール・98
十一章 四人の文豪の洋と和 101
一 住まいと作業衣の和と洋・102、二 谷崎のモダン:洋か和か:和と洋か・103、三 谷崎のモダン、カタカナを繰り広げて・105、四 究極の和洋一体:靴を脱ぎスリッパを履き、掘り炬燵を発明したバーナード・リーチ・108、五 諭吉のモダン指南と四文豪・109
十二章 大正時代の知識人の寵児ウイリアム・モリス 111
一 ウイリアム・モリス:漱石と芥川のあこがれ・112、二 モリスと柳宗悦:「貴族的」と批判・115
十三章 混乱がなかった和洋折衷 117
一 靴を脱ぐ日本・118、二 型而工房の畳摺:和の上に洋の椅子。谷崎もまた・120、三 和と洋の和解役:スリッパ登場・124、四 女を陰影に封じ込める谷崎:襟から上と袖口から先・127、五 靴とスリッパ、モダンへの掛け橋・129、六 和洋混在の戦闘装束・131
参考資料 133
おわりに 『陰翳礼讃』の最後に 137
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